これまで漁業で捨てられていた地魚など「未利用魚」を、新たな商品として流通させる取り組みが広がりそうだ。水産庁は2015年度から「未利用・低利用・規格外の魚」を活用した新商品を開発する民間の取り組みを積極支援することになった。
学校給食などにも未利用魚を売り込む方針で、私たちの食卓が地魚を使った新商品で賑やかになりそうだ。
「未利用魚」は捨てられることも多い
日々の沿岸漁業で水揚げする魚の中には、サバやイワシなど市場価値のある魚でも魚体が小さかったり、もともと市場には出回らない深海魚や地魚などが混じる。これらの「未利用魚」は、漁師の家庭や地元で消費されるか、捨てられることが多いという。ところが近年は、水産業者などが食べやすい商品に加工し、付加価値をつけることで市場に流通させる取り組みが増えているという。
島根県出雲市の「別所蒲鉾店」は、大漁で価格下落が起きやすいトビウオ、アジを材料にカマボコ技術を応用した無添加の新商品を「おさかなソーセージ」として学校給食などに販売している。三重県津市の三重県漁業協同組合連合会は、魚体が小さい魚を加工し、骨まで食べられる商品を開発。こちらも学校給食などに販売することで、新たな販路を開拓している。
有機食材宅配の「大地を守る会」(千葉市)は、未利用魚や規格外魚を活用した「大地を守る会のもったいナイ魚」を2010年からシリーズ展開している。ヒラメの頭、マグロの尾肉など利用されない部位や聞きなれない地魚を積極的に商品化。国産農水産物の消費拡大に貢献する事業者・団体を表彰する「フード・アクション・ニッポンアワード2014」で優秀賞(販売促進・消費促進部門)を受賞した。
未利用魚・シイラを使った白身魚のフライ
同社は、網走で水揚げした大型のサケを切身や加工品にする際、残った中骨に付着している身(マグロで言えば中落ちの部分)を使った「オホーツク産鮭フレーク」や、ハワイでは高級魚だが国内ではすり身原料になっている未利用魚・シイラを使った白身魚のフライなど約70品目を販売。同社は「未利用資源を活用することで水産業者の収入安定につながり、消費者は安価でおいしいものが購入できる。自然環境・消費者・生産者の三者にうれしい仕組みだ」という。
水産庁によると、水産物の国民1人当たりの年間消費量は2001年の40.2キロから2013年には27.0キロと大幅に低下している。日々の漁で水揚げされる無名の地魚や深海魚でも、都会の消費者の間では「地方の珍しい魚を食べてみたい」というニーズがあるのも事実。水産庁は2015年度予算に8億円を計上し、「産地から消費地までの水産物流通の目詰まりを解消し、消費地のニーズにあった水産物の提供をソフト・ハード両面で支援する」という。