2015年3月14日のJR各社のダイヤ改正の目玉は、何と言っても東京~金沢間を最速2時間28分で結ぶ北陸新幹線の開業だが、「東海道新幹線の23年ぶりの高速化」も見逃せない。
最高時速は従来を15キロ上回る285キロとなり、1日計37本の列車が東京~新大阪間で3分短縮する。日本の大動脈として51年目に入っている東海道新幹線は「北陸」も意識しブラッシュアップに余念がない。
路線に急なカーブが多いため、高速化が遅れる
東海道新幹線の高速化は、「のぞみ」を導入した1992年以来となる。日本の高度成長期、東京五輪に間に合うように慌ただしい用地買収と突貫工事で1964年10月に開業した東海道新幹線は、路線に急なカーブが多いため、高速化が遅れていた。実際、東北新幹線は既に最高時速で世界トップレベルの320キロを達成している。東海道新幹線は開業時の最高速度が210キロ。車両の改良で段階的に270キロとなったが、その進化は1992年で止まっていた。
もちろん、JR東海はリニア中央新幹線の開発のかたわらで東海道新幹線にスピードアップの研究を進めていた。その結果、カーブの多さを克服できるよう、スピードを落とさずにカーブに進入できる車両を開発した。カギを握るのは「遠心力」。カーブを走る時にあえて車体を内側に傾けるように片方を持ち上げれば、安定した走行が可能になることが分かり、そのように車両に改良を加えたという。15年2月25日、285キロを「先行運転」した車両に乗った客が「フッと浮いたような感覚」と話したのは、この「片方を持ち上げた傾き」のことだろう。優秀な日本の鉄道技術者をもってしても、安全を確認するテスト走行を重ねてここまでたどり着くのに20年以上かかった。
東海道新幹線利用して関東から北陸を訪れていた客が減る
ただ、最高速度が15キロ上がった効果が、東京~大阪間3分短縮というのでは、やや物足りなさも否めない。実は、JR東海は「余力を残した」という。つまり、ただでさえ過密ダイヤの日々の通常走行では、285キロで走行可能なところをすべてその速さで走らず余裕を持たせる。その代わり、悪天候などでダイヤが乱れ、その遅れを取り戻す際は、その「遊び」の区間を最高時速で走り、できるだけ早く正常ダイヤに戻せるようにするというのだ。天候によって運行が不安定な飛行機を意識し、鉄道の「確実性」をアピールする狙いもあるようだ。
そんな東海道新幹線だが、新顔の北陸新幹線は結構、意識している。JR東海の柘植康英社長は14年末の記者会見で、「北陸新幹線開業によって東海道新幹線を利用して関東から北陸を訪れていた客が減る」との認識を示した。対抗策として今回のダイヤ改正で打ち出したのは、名古屋で東京発のぞみからひかりに乗り換え、さらに在来特急「しらさぎ」への接続を改善すること。このルートによる首都圏~福井・金沢の所要時間を46分も短縮した。
3月末から駅弁も順次刷新する
さらに、こうした「ハード」面だけでなく、「ソフト」面でも改善を施した。具体的には、3月末から順次刷新する駅弁だ。新作は、コシヒカリなどの国産ブランド米をブレンドし、食味を向上。価格は税込み1000円で買いやすくする。「海鮮系」を強化し、特に新たな「海鮮丼」は蟹のほぐし身やいくら、かずのこ、鮭などを盛り付けて華やかにする。外国人客の増加を踏まえて英語でも表記。お茶飲料の「旅茶房」は東海道新幹線沿線の新鮮な茶葉にこだわったラインアップにリニューアルする。また、車内販売でスイカなどJR系電子マネーの利用を可能にして利便性を向上する。
意外と「北陸」を意識しているJR東海。果たして一連の改善効果はいかに......。