「同性婚が少子化に拍車かける」 議員のTV発言、他国の例ではどうなのか

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   同性婚を巡るテレビ番組での討論で、出演した自民党議員が「同性婚を制度として認めたら、少子化に拍車がかかるのではないか」と発言し、同性婚賛成派らからの反発を招いている。

   海外で実際に同性婚を認めている国の中には、逆に出生率が上がっているケースも少なくない。

自民議員は日本の「伝統的な家族制度」掲げる

   日本では現在、同性婚は法制化されていない。2015年2月18日の衆院本会議で安倍晋三首相は、「現行憲法の下では同性カップルに婚姻の成立を認めることは想定されておりません」と述べた。今後についても「極めて慎重に検討を要する」とするにとどめた。

   一方で東京・渋谷区では、同性カップルを夫婦に相当する関係と認めて「パートナーシップ証明書」を発行することを盛り込んだ「渋谷区男女平等及び多様性を尊重する社会を推進する条例」案が3月の区議会で提出された。従来は、パートナーが緊急入院しても「家族でないから」と面会を断られたり、夫婦として受けられるサービスの対象から外されたりしてきた。条例案は、区が各種事業者に対して、同性カップルを夫婦と同等に扱うよう求めるものだ。

   3月2日放送の「ビートたけしのTVタックル」では、渋谷区に住む女性同士のカップルと、自民党衆院議員の柴山昌彦氏らが出演し、同性婚を巡って議論が交わされた。カップルは、現状では「共有名義のローンが組めない」「パートナーに財産が残せない」といった例を挙げ、「特別なことをしてほしいわけではない。異性のカップルと同じ選択肢が欲しい」と訴えた。

   これに対して柴山氏は「議論が熟していない」と言い、日本の「伝統的な家族制度」を掲げた。男女が一緒になり、世帯として子供を育てる。そこに税制や法律上の同居義務を課している。柴山氏は、家族のあり方は多様化してはいるが、「典型的には父母の下で子が育つ」という考え方が浸透しているとして、同性婚を法的に認めることに慎重な考えを示した。

   一方、出演者のひとり、ミッツ・マングローブさんが「夫婦や家族の意味合いがどんどん変わってきている。繁殖だけが結婚じゃない。そろそろ男同士、女同士の結婚を認めてもいいのではないか」と同性婚導入を促した。

   すると、柴山氏は、こう返した。

「同性婚が自由にできたら、少子化時代にマッチするのか。(同性婚が)制度化したら、少子化に拍車がかかるんじゃないか」

   この「拍車が」意見に対しては、スタジオ内で反論が続々寄せられた。現状でも子どもを持つ女性と持たない女性がいる、高齢者同士の結婚だってある、として、少子化と同性婚は分けて考えるべきだと反発の声が相次いだ。

オランダやデンマークで出生率上昇

   柴山氏の懸念は果たして現実に起きているのか。2015年3月4日付の東洋経済オンラインの記事によると、同性カップルにも異性のカップルと同じ結婚を認める制度があるのは、オランダやベルギーなど10の国・地域。また、結婚とは違う同性カップルのためだけの「パートナーシップ法」があるのは、ドイツやフィンランドなど12の国・地域。両方あるのがノルウェーや英国など7か国となっている。ほかにイスラエルも、同性カップルの権利を保障する国だそうだ。

   これらの国・地域では、本当に出生率が下がっているのか。J-CASTニュース編集部では、経済協力開発機構(OECD)や世界銀行のデータを基に、パートナーシップ法や同性婚を認める法律を施行した年と最新の2012年の出生率を比較した。制度が2012年以降に設けられたり、米国のように国単位ではなく一部地域で法律が施行されたりしているケースは比較する数値が出せないため除いた。すると、出生率が上昇した国は、世界最初に同性婚法を施行したオランダや、世界初のパートナーシップ法を定めたデンマークなど13か国、低下した国はスペインや南アフリカなど8か国で、出生率アップの例の方が多かった。

   また、こんな事例もある。同性婚制度が議論されていた米ケンタッキー州では、州知事が「異性間の結婚でないと、州の出生率低下や経済の停滞を招く」と主張し、同性同士の結婚を禁じる主張をしていたが、米連邦裁判所ではこの主張を退けた。ケンタッキーの地元紙「クーリエジャーナル」(電子版2014年7月2日付)記事によると、判事のひとりは、同性婚を締め出すことが、異性婚のカップルによる生殖についてどのような影響を及ぼすか、知事側は全く説明していないと断じた。同性婚と出生率の低下を関連付けても、根拠が示されていないというわけだ。

   「TVタックル」で批判を浴びた柴山議員は、番組出演後、自身のツイッターに「不利にしないようにすることと、正面から認めることの間にはやはりギャップがあります」と投稿した。

   同性婚の制度化は、欧米を中心に急速に浸透しており、日本の対応に関心が高まっている。議論は今後も続きそうだ。

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