大通りから1本入った住宅街には、今も物々しい雰囲気が漂う。そこには、川崎市の中学1年、上村遼太さんの命を奪った容疑がかかる18歳少年が暮らしていた自宅がある。
警察関係者や報道陣の姿は少なくなったが、数日前、少年宅の塀に何者かによる赤いスプレーの落書きが発見された。容疑者逮捕後も収まらない、心無い行動に近隣住民は不安を募らせている。
「エスカレートして、今度は放火でもあったらどうしよう」
少年宅のブロック塀には大きく赤いスプレーで「フィリピンにかえりたい」と書かれている。何者による犯行か分かっていないが、容疑者の母親の出身をやゆしているようにも思える。家族が消そうとしたのか、雨によるものなのか、文字は少しかすれている。
2015年3月5日、J-CASTニュースの取材に父親がインターホン越しに応じ、「落書きがあったのは3日ぐらい前です」と話し、警察に通報したことを明かした。慎重に言葉を選ぶような受け答えが印象的で、「これ以上はコメントを控えさせてください」と上村さんの事件については話さなかった。
直後には2階の窓から母親が顔を出し、「名刺だけ入れておいてください」と郵便受けを指差した。記者が「お騒がせしました」と声をかけると、黙ってうなずき窓を閉めた。
付近は国道が走っているものの、一本路地に入ると静かな住宅街だ。昼間は近所の人の姿が見えるが、夜になると人通りは少ない。近隣住民は「夜になって若者がたむろするような場所ではない」といい、警察関係者も「特段、治安が悪い場所でもない」と話す。
逮捕後も続く騒動に一部住民には不安が広がる。翌日には町内会が開かれ、「エスカレートして、今度は放火でもあったらどうしよう」とおびえる人もいたという。
付近を歩いていた人は「騒ぎがあったから気になって寄ってみた」と話す。場所はネットで知ったとし、すでに容疑者宅の住所は知れ渡ってしまっているようだ。めずらしげに落書きを眺めたり、写真を撮ったりする人もいた。夜には少年宅の前を徐行する車も複数あった。
「あいつらと縁切って、俺らとつるもうと誘っていたのに」
少年の家族は、近所付き合いが深かった様子はないものの、「会えばあいさつするし、感じは悪くなかった」と振り返る住民もいる。少年については「かわいらしい子で、たまに見かけると『こんにちは』と言っていた。まさかあんなことをするなんて」と驚いていた。
数は減ったものの、毎日報道陣は姿を見せる。警察関係者らしき人物の巡回が続き、元の静かな住宅街に戻ったとは言えない。声をかけると、「すいません・・・」と断り、足早に立ち去る住民もいる。
上村さんと18歳少年の関係を知る少年グループの1人は「かみそん(上村さんの愛称)が殴られた1月中旬頃に、あいつらと縁切って、俺らとつるもうと誘っていたのに」と悔しさをにじませたが、誰が落書きしたのか心当たりはないという。