ソニーが、本社内で抱える事業を順次、分社化する方針を打ち出した。まず2015年10月をめどに、ウォークマンをてがける「ビデオ&サウンド事業」を切り離し、完全子会社として運営する。
さらにデジタルカメラや画像センサーなども、分社化の準備を進める。事業の独立性を高めることで、経営責任の明確化と意思決定の迅速化を図り、高収益企業への脱皮を目指す。
17年度にグループ連結で営業利益5000億円以上
2015年2月18日発表した2015年度から3カ年の中期経営方針で示した。主眼は「一律に規模を追わない収益性重視の経営」だ。株主資本を使ってどれだけ利益をあげたかを示す株主資本利益率(ROE)を、最重要指標に据え、最終年度となる2017年度にグループ連結でROE10%以上、営業利益5000億円以上を目標に掲げた。
分社化も、この経営方針に添って行う。平井一夫社長は「厳しい競争環境の中で、本社に頼らず運営することで、より強くなる」と説明する。
ウォークマンは、ソニーの「革新性」の象徴的存在。1979年に発売され、「音楽を持ち歩いて聴く」という斬新なアイデアが受け入れられて大ヒットした。カセットテープだけでなく、CDやMDにも広がり、ソニーをけん引。ただ21世紀に入って米アップルが、インターネット経由で音楽を購入できるハードディスク方式の「iPod(アイポッド)」を発売すると、ウォークマンは色あせた。そんな領域にも「聖域なき改革」を進める。
デバイス、ゲーム&ネットワーク、映画、音楽に投資
ソニーは2014年7月に、長年赤字が続いてきたテレビ事業を分社化したほか、既にパソコン事業も売却した。ただリーマン・ショック(2008年)の後に大胆な構造改革を進めた日立製作所やパナソニックなどに比べて対応は遅く、「一人負け」とも言われた。特に誤算だったのが、スマートフォン事業。中国の新興メーカーが低価格で攻勢をかける中、規模を追い求めて失敗し、多額の損失計上を迫られた。
こうした反省にたったのが、今回の中期経営計画だ。事業ごとの位置づけを三つに区分けした。まずデバイス、ゲーム&ネットワーク、映画、音楽の4分野を、「利益成長をけん引する領域」と位置づけ、積極的な投資を行う。デバイス分野では、ソニーが得意とするCMOSセンサー増産へ向けた設備投資や、技術開発投資を実施。ゲーム分野は家庭用ゲーム機「プレイステーション」の顧客数拡大を目指す。
スマホは「事業変動リスクコントロール領域」
デジタルカメラなどのイメージング・プロダクツ&ソリューション、ビデオ&サウンドは「安定収益領域」と定義した。市場全体の成長は見込めないため、大規模な投資は控えるが、高性能ミラーレス一眼カメラや、ハイレゾなど付加価値の高い商品に注力する。
スマホに代表されるモバイル・コミュニケーションと、テレビは「事業変動リスクコントロール領域」。価格競争が激しく、コモディティ化が著しいが、地域や商品を厳選することで、安定した事業構造を構築する。環境変化に応じ、他社との提携などの生き残り策を検討する。
ソニー株は地合の良さも手伝って上昇基調だ。期待が先行している形だが、どう実行に移していくのかが問われる段階に入る。