春節(旧正月)にあわせて日本を訪れた中国人観光客の「爆買い」などを背景に、家電量販店大手のビックカメラや、総合免税店へと「衣替え」したラオックスの業績が好調だ。
2014年の訪日外国人観光客数は前年比29%増の1341万人と過去最高を更新。このうち、中国人は83%増の241万人に達した。アベノミクスによる円安に加えて、ビザ発給要件の緩和や消費税免税品の対象拡大などで、「追い風」が吹いている。
1袋888万8888円~666万6666円の福袋が売れた
観光庁の訪日外国人の消費動向調査によると、2014年の中国観光客の旅行消費額は5583億円で、前年比で2倍を超えている。そのうちのおよそ3~4割を買物代に充てているとされる。人気商品は、カメラ・ビデオカメラ、時計、洋服やかばん・靴など。最近ではセラミック包丁も売れている。
家電製品の売れ筋は、洗浄便座や電気炊飯器、電気ポット・魔法瓶など。品質のよさに加えて、日本では中国国内の半額から3分の1の価格で購入できるため、帰国後に親戚や知人らの「おみやげ」としてまとめ買い、いわゆる「爆買い」するようだ。
そうしたなか、東京・秋葉原にあるラオックス本店には、大型バスで乗りつけた多くの中国人観光客が続々と訪れる。
かつては電気街の老舗の家電量販店だった同店だが、いまでは「総合免税店」の看板を掲げる。取り扱っている商品も、家電にとどまらず、ゲームやホビーグッズ、高級腕時計やジュエリーなどの貴金属品に海外観光客向けのおみやげなどを豊富に取り揃えているほか、米ドルにユーロ、人民元や香港ドル、台湾ドルに韓国ウォン、タイバーツ、豪ドルを取り扱う自動外貨両替機を設置する。訪日外国人には至れり尽くせりというわけだ。
そんなラオックスでは、中国の春節(2015年2月18日~24日)にあわせて、総額10億円の福袋2万点を販売。高級時計などが入った、1袋888万8888円~666万6666円の福袋が売れ、そのようすは中国のメディアでも紹介された。
同社の2014年12月期決算で、売上高は前期比51.4%増の501億円。15年2月17日に発表した中期経営計画(15年1月~17年12月)によると、15年12月期の売上高目標で700億円、それを17年12月期には1500億円に伸ばすという。
現在の18店を、3年間で旗艦店から中小型店まで30店以上を集中出店。M&A(企業買収)や事業提携の積極的に推進することで成長する。
さらに株主還元として、3年以内の早期復配を目指すとしている。
14年3月4日にわずか49円だった株価は、この1年に6.7倍上昇して335円となっている。
免税品の売上高「前年同期比で3.2倍」の会社も
家電量販店大手のビックカメラも、春節で売り上げが大きく伸びた。春節時期(2015年2月18~24日)の免税品の売上高が前年(14年1月31日~2月6日)と比べて、じつに3.2倍に増えた。
大阪・難波店や東京・有楽町店、新宿西口店やビックロ、札幌店で伸びた。「中国人のお客様は、買い物を目的に日本に来ています。観光スポットに近いこともありますが、買い物ツアーの団体がバスで乗りつけて買っていきます」と話す。
腕時計やカメラといった定番商品のほか、最近の売れ筋は理美容家電。男性のシェーバーや女性の肌ケアグッズがそれで、「メーカーが中国で積極的にCMを展開していることもあって、認知度が上がっている」という。
2014年のこの時期は、4月からの消費増税に伴う駆け込み需要で家電商品も売れに売れた。それもあって、同社の売上高も15年1月は前年比で、わずかにマイナス(0.8%減)になった。
とはいえ、上期(14年9月~15年1月期)の売上高は3.4%の伸び。株価も中国人の「爆買い」をはじめとする訪日外国人の買い物が材料になっているとみられ、15年3月4日時点で1342円と、年初来高値の1420円(1月5日)をうかがう。
前年同日(590円)と比べて、じつに2.4倍も上昇。消費増税の影響など、どこかへ吹っ飛んでしまったかのようだ。