福島、山形両県にまたがる吾妻山が火山活動を活発化させている。気象庁が噴火警戒レベル2に引き上げたことから、福島市は2014年12月から入山を禁止した。しかし、規制を無視する入山者が後を絶たないため、行政は頭を抱えている。入山禁止からこれまで、山スキーなどを目的に100人以上が「自己責任で行く」などとして山に入っているというのだ。
福島市では、いくら自己責任だと宣言したところで、遭難などもしものことがあれば山岳救助隊の出動となり多くの人に迷惑がかかることもあり、「大人としてのルールは守ってほしい」と呼びかけている。そんな状況のなか、登山者はどうしてルールを破ってまで吾妻山に登りたいのだろうか。
スノーモービルやスキーで規制ラインを突破
吾妻山は、福島市西部から山形県米沢市にかけて東西25キロ、南北15キロにわたり連なる山脈で、最高峰は西吾妻山の2035メートル。日本百名山にもあげられ、温泉も豊富だ。気象庁の資料によれば、過去1万年間の噴火活動として、約4900~7700年前に吾妻小富士や桶沼の火砕丘が形成され、吾妻小富士付近から東麓に溶岩が流出した。その後は、マグマ性爆発が主体となり、少なくとも6回以上の堆積物を残す活動が発生している、としている。
そんな吾妻山は14年12月12日に火山性微動が発生するなど火山活動が活発化したとし、気象庁が噴火警戒レベルを「1」(平常)から「2」(火口周辺規制)に引き上げ、火口から半径500メートルを警戒範囲に定めた。登山客は、主に磐梯吾妻スカイラインを利用することが多いため、福島市は磐梯吾妻スカイラインが冬季閉鎖される期間については入山を禁止することにした。しかし、例年よりは少ないとはいえ、規制を破って入山する人たちが後を絶たない。福島市政策推進部危機管理室の調査によれば、入山禁止をしてからこれまで100人以上が山に入っているという。
「山スキー」のスリルとスピードがやみつきに?
国から山頂付近の管理を任されている自然公園財団浄土平支部に話を聞くと、登山者はスキーやスノーモービルを使ったり、徒歩で侵入したりしている。入山は禁止だと注意しても、
「分かっているけど、自己責任で、ちょっと行ってくる」
などといった反応が返ってきた。そうした人たちの後をついて行ったわけではないが、おそらく1時間から1時間半をかけて山を登り、スキーで滑走し降りてくる「山スキー」を楽しんでいる可能性が高い。「山スキー」の愛好者は多く、一度味わった人はそのスリルとスピードがやみつきになる場合もあるのだという。噴火の危険についてはどう思っているのかについては、乗用車のナンバープレートを見ると福島県内が多く、山に馴染んでいるという思い込みがあるようで、
「気象庁は火口から半径500メートルが警戒地域と発表していて、おそらく彼らは火口から3キロ程度離れていれば大丈夫だと思って山に登っているのではないでしょうか」
と打ち明ける。しかし、火口からある程度離れていたとしても、噴火による雪崩など災害に見舞われる危険は付いて回る、と危惧する。市の危機管理室の担当者は、いくら登山者が「自己責任だ」といったところで事故などが起こった場合は山岳救助隊などいろんな人の助けによって捜索や救助活動をしなければならなくなる。
「市としては、災害が起こる前に食い止めなければならない。ぜひとも大人として社会のルールは守ってほしい」
などと呼びかけている。