ジャスダック市場に上場する大塚家具の株価が急上昇している。
経営の主導権をめぐって対立する父と娘が委任状争奪戦(プロキシーファイト)を繰り広げるという異例の事態に陥っているが、投資家もさまざまの思惑を抱えて「買い」に入っているようだ。
「ジャスダックの上場銘柄としては異例」の売買
2015年3月3日の大塚家具の株価は、前日に付けた年初来高値を更新。一時、前日比445円高の2488円まで上昇した。しかし、その後は売られて終値は同203円安の1840円に下げた。
とはいえ、父で創業者の大塚勝久会長が委任状争奪戦の方針を明らかにした2月25日終値(1105円)と比べて435円も上昇。前日の2日まで4営業日連続の上昇、かつ3営業日連続で値幅制限の上限(ストップ高)を記録していた。
活発な売買が続いており、「ジャスダック市場の上場銘柄としては異例なくらい」(市場関係者)という。3日の出来高は1483万株。売買代金で325億円にのぼる。
大塚家具の経営権をめぐっては、父・勝久会長と久美子社長が対立。ふつうであれば、「お家騒動」はイメージがよくないが、どういうわけか、大塚家具株にとってはプラスに働いている。
背景には、3月27日の株主総会へ向けた委任状争奪戦がある。この戦いに勝つため、父と娘、どちらの陣営もこれまで以上に積極的な経営方針を発表する可能性が高く、それによってさらに株を買う動きが活発になるとの思惑を誘い、買い注文が膨らんでいるというわけだ。
加えて、同社が2月25日に発表した15年12月期の業績予想(単体)で、黒字化を見込んでいること。また、久美子社長が打ち出した1株あたり40円から2倍の80円に引き上げる、大幅な増配政策がある。発表前の株価は1100円前後だったので、配当利回りにすると3%台後半だったものが、7%を超えることになる。これに投資家の多くが注目したとみられる。
「増配」は久美子社長に有利に働く?
たしかに配当が増えれば既存の株主はうれしいし、新たに大塚家具株を買う投資家も、株を買いやすくなる。
ただ、ある個人投資家は「割安感はありますが、揉めている原因がビジネスモデルですからね。将来性をみるには、やはり株主総会後じゃないですか」と話し、投資に慎重な向きもある。
一方、増配の恩恵を受ける株主にとっては、委任状争奪戦で久美子社長を支持する要因の一つになるかもしれない。
現在、大塚家具の株式は勝久会長が約18%。同社の資産管理会社で、久美子社長の意向が反映されるとみられている、ききょう企画が約10%を保有する。焦点になるは、1月時点で約10%の株式を保有する米投資ファンドのブランデス・インベストメント・パートナーズとの見方があるが、同ファンドが久美子社長を支持しているとの情報もある。