茨城県下妻市の風俗店経営者が売春防止法違反(契約、周旋)の容疑で逮捕され、同市に批判が押し寄せている。この経営者はNPO法人「茨城人権擁護支援会」の代表で、市はこのNPO法人の立ち上げを認証し、市のホームページでも紹介していたからだ。
経営していた風俗店はデリバリーヘルスで、風俗嬢を送迎する車には「茨城人権擁護支援会」というステッカーが貼られていた。また、NPOは「子どもの健全育成を図る」活動をするとしていたにもかかわらず、女子高生を脅して無理やり売春をさせていた、という。
「子どもの健全育成と社会教育の増進を図ります」
報道などによれば、風俗店経営者の男(61)と従業員の男(22)が2015年2月26日に逮捕され、27日に水戸地検下妻支部に送検された。容疑はデリバリーヘルス嬢に売春させていたというもので、中には18歳の女子高生もいた。女子高生は経営者に脅されて売春を強要されたとみられている。風俗店とは知らずにアルバイト面接を受けたところ、経営者から免許証などをコピーされ「家に行くぞ」などと脅されて売春契約をし、14年12月から保護されるまでの3か月間で男性客約60人を相手にさせられていたという。
実はこの経営者、2014年9月にNPO法人「茨城人権擁護支援会」を立ち上げていた。目的は日本で暮らす外国人や子供たちに対して、生活に関わる人権擁護をするというもので、「社会教育の増進を図る活動」「子どもの健全育成を図る活動」などと謳っていた。しかも、デリバリーヘルス嬢を送迎する乗用車にはNPO法人の名前入りのステッカーを張っていたという。
茨城県警に取材すると、今回の事件が発覚したのは「売春をしている店がある」という匿名のタレこみ電話がきっかけ。捜査したところ事実であることが分かり、逮捕した。NPO法人については、
「活動そのものは無かったと聞いています」
と説明した。
ネット上では下妻市に批判の矛先が向けられている。というのも、このNPO法人を認証したのは下妻市であり、市のホームページにもこのNPO法人を掲載して紹介していたからだ。ネット上では、
「風俗店経営者になぜNPO法人の認証を与えたんだ」
とか、
「ホームページで紹介していたなんて何事だ」
などという批判が出ている。下妻市にも抗議が来ているという。
「NPO法人解散も視野に責任者と交渉をしている最中だった」
下妻市市民協働課の担当者は、
「申請してきた人物が何者なのかといった実態が分かっていなかった」
という。提出された書類に不備はなく目的も真面目な社会貢献と取れる内容だったため認証した。市のホームページには地域のNPO法人を紹介するページがあり、14年10月過ぎに掲載することになった。ところが15年に入り匿名での問い合わせがあった。このNPO法人と、風俗店の受け付け電話番号が同じなのはどういうことだ、というもので、市の職員が調べたところ、この2つは同じ事務所を使っていて代表者も同じだった。
「そのため、NPO法人としての信頼に関わる問題だとして、NPO法人解散も視野に責任者と交渉をしていた最中だったんです」
NPO法人の代表の逮捕は15年2月27日の新聞記事で知った。外部から「いつまでホームページに情報を出しているのか」といった怒りの電話が入り、この日の夕方にNPO法人のページ自体を閲覧不可にした。15年3月3日現在も「ただいま、メンテナンス中です」という表示が出ていて、見ることはできなくなっている。
内閣府によると、NPO法人は「申請が設立基準に適合すると認められるときには、設立を認証しなければならない」とされている。しかも、書面審査が原則なので、形式さえ整っていれば設立を認めざるを得ない。下妻市の対応もある意味しかたのないことかもしれない。