日本マクドナルドホールディングス(HD)の原田泳幸(えいこう)氏(66)が2015年3月に会長職を退任し、同社の経営から完全に身を引くことになった。経営不振に陥っていた日本マクドナルドを改革し、「デフレ時代の勝ち組」に押し上げた、と一頃もてはやされたが、ここ数年は低迷から脱する方法を見つけられなかった。
2014年にはベネッセホールディングスの会長兼社長に転じたが、就任1か月もたたないうちに発生した顧客情報の流出事件でベネッセも苦境にあえいでいる。原田氏のカリスマ性は薄れつつある。
「100円コーヒー」に多彩なサイドメニュー、コンビニがマックを駆逐
原田氏は2004年2月、アップルコンピュータ(現アップル)の日本法人社長から、日本マクドナルドの副会長兼最高経営責任者(CEO)に転身、その後社長に就いた。同社は30年以上経営を握った創業者、故藤田田氏が会長を退いた直後だった。藤田時代後半から続く厳しい経営から立ち直れず、2003年12月期には連結最終(当期)損益が2年連続で赤字に陥っていた。
原田氏は就任後、ハンバーガーなど商品の一部を100円という低価格で販売する「100円マック」を導入。若者からサラリーマンまで幅広い層の顧客を取り込むことに成功し、業績は急回復した。
同社の既存店売上高は2004年から2011年まで8年連続で増加し、2008年には国内の外食産業で初めて全店売上高5000億円を達成。攻めの姿勢に取り組む原田氏は「カリスマ経営者」ともてはやされた。
しかし、2012年以降は一転して業績は悪化し、2012年12月期は営業減益に。原田氏は米国本社の意向で社長職を解かれ、代わりにサラ・カサノバ氏が新社長として日本に送り込まれたとされている。
日本マクドナルドはその後、取引先の中国の工場で期限切れ鶏肉の使用が発覚したうえ、商品の異物混入も表面化して顧客離れに歯止めがかからない。
ここ数年の日本マクドナルドの苦境の最大の要因は、コンビニエンスストアや外食産業なども巻き込んだ激しい競争だ。従来の日本マクドナルドの魅力の一つは、「100円コーヒー」だった。
しかし、いまや100円程度の「淹れたてコーヒー」といえばコンビニの代表的商品に成長。コンビニは日本マクドナルドの主力であるハンバーガーやコーヒーだけでなく、多彩なメニューの軽食も提供し、かつての外食産業の王様、日本マクドナルドを駆逐しているのが現状だ。