軍に提供した物資や資金は軍事転用される心配
ただ、「実質的意義」に基づき個別に判断するので、どこまでは認めるかの線引きは曖昧だ。例えば、新大綱も「重点課題」に挙げている「海上保安能力を含む法執行機関の能力強化」では、政府は1014年夏、ベトナムに巡視船に転用できる中古船6隻をODAで供与すると決定したが、そのためにベトナムは軍に属していた海上警察を軍都別組織にした。これが、「新大綱では、......直接軍に支援ができる」(2月11日「朝日」朝刊)という見方と、「相手国の軍と海上警察が一体となっている場合は軍事転用が疑われるため、(供与要請に)応じられないという」(同日付「読売」朝刊)と、大手紙の記事でも見方が分かれるほどだ。そもそも、高度な機密性を持つ軍に提供した物資や資金が軍事転用されていないか、十分チェックできる保証はない。
実は、今回の新大綱とは別に、他国軍へのより直接的な援助の検討が着々と進んでいるとされている。東南アジア諸国連合(ASEAN)諸国などの軍に対し、海洋安保のための防衛装備品を防衛予算で援助する仕組みを作ろうという構想で、2014年4月に武器輸出3原則を見直したことを踏まえ、防衛省の有識者検討会で議論されている。政府は早ければ2016年度予算で実現したい考えという。これはODAとは別の枠組みだが、実態として、ODA・開発協力と防衛予算が一体として他国軍を支援していくことになり、新大綱と相まって、今後、議論を呼びそうだ。