重要な国と結びつきを強めるのに活用する狙い
第2に、途上国に限っていた支援対象国を、国民所得が一定水準以上に経済成長を遂げた「ODA卒業国」にも拡大。「開発ニーズの実態」に応じて援助を再開できると規定した。
第3に、「国益の確保に貢献」との表現も初めて明記し、日本の利益につながる協力を進め、国際貢献との両立を図ることを打ち出している。
第2、第3については、援助をテコに影響力を拡大する中国への対抗の意味合いが強いとされる。「短期的な利益を追求するあまり、援助対象を安易に選別すれば、人道を重視してきた日本の援助への国際的信頼を傷つけかねない」(NGO関係者)との懸念は残る。ただ、「むしろ今まで、外務省の『戦略性のなさ』は国際的にも際立っていたから、どこまで露骨にやるかは議論があるが、一定の戦略性は当然」(経済官庁幹部)との指摘がある。
「ODA卒業国」ということでは、ハリケーン被害に苦しむカリブ海のバルバドス、トリニダード・トバゴなどや、廃棄物処理など都市問題を抱える中東湾岸諸国が念頭にあるといい、国連安全保障理事会常任理事国入りやエネルギー安全保障をにらみ、重要な国と結びつきを強めるのに活用する狙いが透けて見える。
3本柱のうち、議論になるのは第1の他国軍への協力だ。これまで、2001年にセネガルの拠点医療施設と位置付けられた軍病院の改修を支援した例がある程度で、実質的には今回が「解禁」になる。「紛争後の復旧や復興など非軍事目的の活動に軍が重要な役割を果たすようになってきた」(岸田文雄外相=10日の会見)というように、「軍隊が重要な民生活動を担っている場合は、一律に排除するのは不合理」(外務省筋)との判断だ。政府は災害救助を実施する軍への物資支援や、軍関係者への民主化研修といったものを想定しており、他国軍への支援実施前だけでなく実施後も定期的に現場を視察するなど監視を継続する方針も示している。