三菱UFJフィナンシャル・グループが、社外取締役主導で経営を監督する「委員会設置会社」へ移行する方針を固めた。2015年2月下旬の取締役会で正式決定し、6月の株主総会で承認を得たい考えだ。
3メガバンクの中では、みずほフィナンシャルグループに次いで2番目。三菱UFJがみずほに追随した背景には、海外の金融当局や投資家の厳しい目がある。
みずほとは対照的に、移行には慎重な姿勢
「社外の人間に銀行の経営が分かるのか」。2013年、暴力団融資問題をきっかけに経営監視強化を迫られたみずほが委員会設置会社への移行を打ち出した時、三菱UFJの役員や幹部は一様に懐疑的だった。みずほとは対照的に、移行には慎重な姿勢を示していたのだ。
委員会設置会社は、メンバーの半数を社外取締役が占める「指名」、「報酬」、「監査」の3委員会の設置が義務づけられている。業務執行と経営監督を明確に分けることによって、経営の透明性を向上させることが狙いだ。
三菱UFJは日本企業の大多数を占める監査役設置会社だが、これまでも社外取締役を増やし、役員人事を決める指名委員会や報酬を決める報酬委員会を任意で設けるなど、独自のやり方で経営監督機能の強化に力を入れてきた。こうした経緯も、委員会設置会社への移行に距離を置いてきた要因だ。
「三菱UFJも必ず追随する」と「予言」
それが、なぜ今になって委員会設置会社へ転換するのか。背中を押した最大の理由は、国際的な規制強化の流れと海外投資家の厳しい視線だ。
米欧の金融当局は、巨大金融機関の経営の「暴走」を防げずに引き起こされた2008年のリーマン・ショックを教訓に、金融機関に対して経営監督機能の強化を求めている。FSB(金融安定理事会)は、国際金融システム上、重要な金融機関「G-SIFIs」として認定されている世界の巨大金融機関に、ガバナンス(経営統治)強化策を強く要請している。
日本では一般的な監査役設置会社は、海外の当局や投資家から見れば、執行と監督が完全に分離されていない懸念がぬぐえない。いち早く委員会設置会社へ移行したみずほの経営陣は「世界では委員会設置会社がスタンダード。金融当局の要請もある。三菱UFJも必ず追随する」と「予言」していた。海外事業を稼ぎ頭に位置づける三菱UFJにとって、こうした海外の視線はもはや無視できるものではなく、委員会設置会社への移行が最善との結論に達した。
三井住友の今後の動向が注目される。
ただ、委員会設置会社へ移行しさえすればガバナンスが強化されるわけではない。問題は実効性を伴うかどうかだ。役員の人事権まで握る社外取締役が単なる「お飾り」に終われば、ガバナンス向上は望めない。まずは取締役会議長を外部人材に任せるのかなど、新体制の布陣が実効性を占う試金石になりそうだ。
みずほに続き三菱UFJが委員会設置会社へ移行すると、3メガバンクの中では三井住友フィナンシャルグループだけが監査役設置会社となる。三井住友は現在のシンプルな組織構造が迅速な経営判断につながっているとも言われており、今後の動向が注目される。