「大学教育水準とは見受けられない」「学士課程に相応しい授業内容となるよう見直す」――。文部科学省が大学の新設学部、学科を対象に行った調査報告に厳しい文言が並んだ。
指摘を受けた各校のシラバスを見ると、be動詞や分数表現など中学で学習する内容が英語や数学の基礎科目の学習内容として書かれており、文科省からは早急に是正するよう求められている。
「大学教育水準とは見受けられない授業科目がある」
2015年2月19日、文科省が発表した「設置計画履行状況等調査」は、大学や短大がこの4年前後で新たに申請、開設した学部や学科などが適切に行われているかを調べたものだ。教員不足や定員確保の努力不足、さらに授業のレベルについて指摘している。
対象となった502校のうち、授業のレベルに関して指摘を受けたのは千葉科学大(千葉県銚子市)、つくば国際大(茨城県土浦市)、東京福祉大(東京都豊島区)の3校だ。千葉科学大とつくば国際大は一部基礎科目の授業について「大学教育水準とは見受けられない授業科目がある」、東京福祉大は留学生向けの科目に日本語学校と同等の授業があるとして「学士(教育学)を授与するにふさわしい教育課程となっているかどうかについて疑義がある」などと指摘され、「是正意見」を受けた。
千葉科学大危機管理学部のシラバスを見ると、「英語I」ではbe動詞や一般動詞過去形など「英文法の基礎を確認した上で、英語で書かれた文章を読み解くトレーニングを行う」、「基礎数学」では分数表現や不等式、比例・反比例など、中学で学習する内容が授業計画として記されている。
つくば国際大も同様で、医療保健学部の物理や化学、生物の基礎授業について「大学教育の質の担保の観点から、学士課程に相応しい授業内容となるよう見直すか、正規外授業のリメディアル教育(補修)で補完すること」と指摘された。
文科省大学設置室によると、調査は大学側への意見聴取やシラバスの精査、学生へのインタビューをもとに評価を行った。「是正意見」を受けた各校には「早急な是正を求め、改善状況報告を提出してもらう」としている。今回の評価によって認可されている申請の取り消しは行わないが、今後1段階上の「警告」を繰り返し受けた大学には新設申請を認めないなどの処置を行う可能性があるという。
「専門教育前に基礎を身に着けるため」
千葉科学大入試広報課は、こうした授業を行っていた理由を「入学段階で学生の英語や数学の習熟度にばらつきがあり、専門教育に入る前に基礎を身に着けるためだった」と説明する。今回指摘を受けた授業は、あくまで習熟度別に編成した中で最も基礎的なクラスだったとし、「全15回の授業のうち、毎回be動詞など基礎文法を講義していた訳ではない」という。今後の対応としては、授業外の補講を行ったり、シラバスの表現を見直したりする方向だ。
ただ、今回行われた調査はあくまで新設された学部や学科を対象に行われた調査だ。文科省担当者は「既存の大学でも質の低い授業が行われている可能性はある」という。また、現役大学生によると、「論文ではなく作文の提出を求められた」「英語の授業でbe動詞を教えられた」という話は決してめずらしくはないようだ。