インターネット検索最大手の米グーグルが2013年に買収したロボット研究・開発のボストン・ダイナミクスがYouTubeに公開したロボット犬「Spot」の動画が物議を醸している。
ボストン・ダイナミクスは米マサチューセッツ工科大学発のベンチャー企業として1992年に設立。米軍や国防総省傘下の国防高等研究計画局と共同でロボットを開発していて、二足歩行ロボット「Atlas」やロボット軍用犬の「BigDog」などの開発で知られる。
新型四足歩行ロボット「Spot」を動画で紹介
ボストン・ダイナミクスが2015年2月9日にYouTubeに公開した、開発中の新型のロボット犬「Spot」は、同社が得意とする四足歩行ロボットで、前作の「WildCat」よりもふた回り以上も小型化した。
バッテリーと電動による油圧で稼働。全体の重量は73キログラムで、大型犬タイプの「Bigdog」から30キログラム超軽くなった。空間を認識するセンサーが搭載されて、狭い通路であってもぶつかることはなく自律走行が可能になっているという。
俊敏な動きで急な斜面や階段を駆けあがり、足場の悪い場所では四肢でバランスを保って、しっかり踏みとどまる。まさに軍事用としての役割を担うロボット犬なのだが、その様子からはまるで「ホンモノ」の犬のようにも見えてくる。
ところが、そんな動画を見て、眉をひそめる人は少なくなかった。見ている人をア然とさせたのは、「Spot」を蹴り上げるシーン。ボストン・ダイナミクスにしてみれば、高度な姿勢制御を証明してみせた映像だが、ロボットといえども犬は犬と、「蹴る」という行為が倫理的に問われることとなった。
インターネットには、
「ロボットは素晴らしい! でもこれが蹴られるのは可哀想に思えた。本当に犬みたいだったから。気の毒なSpot!」
「あの可哀想なロボットたちを蹴るのをやめてくれ。あいつらが何をしたっていうんだ」
「犬を蹴るのは、たとえロボット犬だったとしても、間違ったことに思える」
「一部のシーンが、犬を虐待しているようにしか見えないのは気のせいか」
と、「かわいそう」「蹴るなんて間違っている」といったロボット犬「Spot」に同情的な声が相次いで寄せられた。
「ロボットなんでしょ? 倒れないほうがりっぱでしょ」
とはいえ、そもそも「Spot」は軍事用なのだから、蹴られたりモノにぶつかったりした衝撃で倒れたり傷ついたりしていては役に立たないのではないか――。
インターネットにも、
「ロボットなんでしょ? 倒れないほうがりっぱでしょ」
「グーグルが安定性を試すためにロボット犬を蹴ったことにみんなが憤慨している。ロボット犬だよ。ロボットだよ」
など、問題視するほどのことなのか、といった疑問の声もある。
そんな米国での反響が日本にも「飛び火」。インターネットで盛り上がっている。
「なぜ蹴るという表現を使ったのだろう。ロボットは動物じゃないから蹴ってもいいってことかねぇ。それなのにリアルな犬を目指して日夜努力しているという矛盾」
「必死にバランスをとる仕草は健気。ロボットとはいえ蹴るという扱いは気に入らない」
「日本でロボットと言えば、ドラえもんとかアトムって感覚なんでロボットを蹴るなんて考えてにくいな」
「頭ではロボットって分かっているのに感情を揺さぶられた」
と、どちらかというと「Spot」に同情的な声が多いようだが、
「欧米でも一応こういった発想はあるのか。ロボットについてもっとドライに考えてるのかと思ってた」
「感情移入されるくらいのレベルの動きになったってことだよな。また一歩SFに近づいた」
「愛着もないロボットに対してそんな感情を抱くというのは、いろんなものを擬人化する日本のオタク文化なんかよりよっぽど重症なんじゃないだろうか」
と、冷めた声もある。