岩手県沖を震源とするふたつの地震が立て続けに発生した。ひとつは津波を引き起こし、一時大勢の人が避難を余儀なくされた。
比較的揺れが小さい地震でも、震源の深さや場所によっては大津波につながることがある。東日本大震災から間もなく4年。警戒は怠ってはならない。
「アウターライズ地震だったかもしれない」
最初の地震は2015年2月17日、8時6分頃起きた。マグニチュード(M)6.9で、最大震度4。次は同日13時46分頃で、M5.7ながら最大震度は5強だった。気象庁は、いずれも東日本大震災の余震だと発表した。
ふたつの地震の大きな違いは、津波の有無だ。最初の地震では揺れがそれほど大きくなかったが、岩手県久慈市で20センチ、同県宮古市で10センチの津波を観測している。なぜこの地震だけ、津波が発生したのだろうか。
可能性として考えられるのが、震源の「浅さ」だ。今回はふたつとも、陸側のプレートに海側のプレートが沈み込む境界面付近で発生した。だが最初のものは震源の深さが10キロと、2番目の同50キロと比べてかなり浅かった。気象庁は津波の仕組みについて、「震源が海底下で浅い場合、海底が持ち上がったり下がったりすることになります。その結果、周辺の広い範囲にある海水全体が短時間に急激に持ち上がったり下がったりし、それにより発生した海面のもり上がりまたは沈みこみによる波が周りに広がっていきます」と説明している。
さらに最初の地震が、海溝を挟んで海側で起きたことが津波につながった可能性を指摘したのが、2月18日放送の「とくダネ!」(フジテレビ系)だ。そのうえでこれが「アウターライズ地震だったかもしれない」と報じた。
海側の太平洋プレートが陸側の北米プレートに沈み込んでいくと、陸側プレートが引きずり込まれて最後は歪みに耐え切れず跳ね上がる。このとき地震が起きるが、一方で海側プレートにも引っ張られる力がかかって上下に亀裂が生じることがある。すると海面が一気に上昇して津波を引き起こしやすい。これがアウターライズ地震のメカニズムの大枠だ。
比較的まれなケースのようだが、番組では「巨大地震の余震として起きやすい」と説明した。代表例が1933年の昭和三陸地震。大津波により3000人以上の死者、行方不明者が出たが、これは1896年の明治三陸地震の余震とみられるという。本震から実に37年後に起きたアウターライズ地震と津波だった。
福島沖でのアウターライズ地震を半年前に予知
東日本大震災後にも、アウターライズ型とみられる地震があった。2013年10月26日に福島県沖で発生したM7.1の地震だ。岩手県久慈市と福島県相馬市で40センチ、宮城県石巻市で30センチ、岩手県大船渡市で20センチ、さらに宮城県の東北電力女川原発でも55センチの津波をそれぞれ観測した。この時も最大震度は4で、震源の深さは10キロ。今回の最初の地震と共通点が見られる。
実はこの半年ほど前、東海大学地震予知研究センター長の長尾年恭氏がテレビ番組で、数か月以内に東北沖でアウターライズ地震が起きる可能性を指摘していた。「最大10メートルの津波が襲う」という最悪のシナリオは免れたが、地震発生の予測そのものは的中した格好だ。
「とくダネ!」の中で東京大学名誉教授の笠原順三氏は、東日本大震災のようなM9.0の地震の後は「5~10年、M8.0クラスの地震が起きる可能性がある」と述べ、その場合は津波も大きくなると警鐘を鳴らした。昭和三陸地震の歴史から学ぶとすれば、今後も油断は禁物だろう。おりしも今回の地震が起きた同じ日の2015年2月17日、内閣府は、北海道沖から千葉県沖の千島海溝と日本海溝で発生が予想されている巨大地震や津波の高さの規模を見直すための検討会を立ち上げた。