海水温の上昇で、近海ものの水揚げ量が減った...
アジやイワシ、サバの水揚げ量が減少傾向にある原因について、前出の卸売会社は、「一つは地球温暖化の影響で、海水温の上昇があります」と指摘する。これまで日本沿岸近くを流れていた黒潮が沿岸から離れて流れるようになったため、黒潮に乗って回遊していた魚が沖へ沖へと流れて回遊するようになった。
「少し前まで九州~静岡、房総沖あたりで獲れていた魚が、最近は青森あたりで獲れるようになったのと同じ現象ですね」と説明。たとえば現在、アジは長崎沖や鳥取・境港沖で獲れるものが主力だが、「最近は九州の水揚げ量は減っています」と話している。
一方、漁師は最近でこそ原油価格が急落したことで、ようやく利益が見込めるようになってきたものの、一時はコスト削減で出漁を制限してきた。それにより水揚げ量が減ったこともある。
ある市場関係者は「沖で漁をするには、船にそれなりの装備が必要になります」と、遠方へ漁に出るのは、コストもかかり、そんなに簡単な話ではないようなのだ。
また、乱獲による資源の減少もある。中国などの周辺国では稚魚などを見境なく、大量に水揚げしてしまうケースが少なからずあるという。
さらには、加工業者がアジやイワシなどを「買い占めている」との見方もある。全体的に水揚げ量が減るなかで、加工業者が一定量を確保しようと動いているというのだ。加工業者も量を確保しなければ商売にならないことはわかるが、加工業者が確保する量が増えれば、鮮魚店に回る分は減る。その分、価格も上がるということらしい。