日本経済新聞社は2015年2月17日、岡田直敏副社長(61)が社長に昇格し、喜多恒雄社長(68)が代表権のある会長に就く人事を決めた。日経電子版が報じた。平田保雄会長(69)は顧問に退く。3月26日の株主総会後に行われる取締役会で正式決定する。
岡田氏は日経の主流とも言える経済部出身。日本の新聞業界では初めての有料「電子版」を立ち上げ、後に紙媒体のトップに転じた人物だ。
同期から東京本社編集局長を引き継ぐ
岡田氏は1976年入社。パリやニューヨークに駐在し、経済解説部長や経済部長を経て09年に取締役(電子新聞事業・情報技術・文化事業担当)に就任。10年には常務(電子新聞事業担当)に昇格している。11年3月には、同期の小孫茂氏(現・専務販売統括、電波担当)の後を受ける形で、東京本社編集局長に転じ、12年に専務、14年に副社長に就任していた。
東京本社編集局長は「社長への登竜門」だとされ、就任時は「年次順送り主義の強い同社では異例の人事」(「ザ・ファクタ」2011年4月号)だとも指摘された。
日経電子版が創刊されたのは2010年3月。同年の新聞協会賞では「経営・業務部門」を受賞し、岡田氏は受賞を報告する9月5日付の記事で、
「有料会員のほぼ3分の2が日経新聞と一緒に電子版を読んでいる。最近の会員調査結果は、出勤前は自宅で新聞を、通勤中や会社では電子版をと、使い分けている姿を映し出している」
と書いている。創刊時から、電子版の購読をきっかけに紙媒体の購読をやめる「カニバリゼーション」を強く警戒していたことが分かる。
電子版は4年で読者5倍、紙媒体は8.7%減
記事によると、当時の会員数は50万人を超え、そのうち有料会員は7万人台に乗っていた。14年12月1日時点の日経電子版の読者数は250万人超で、そのうち有料会員は38万人。4年強で読者数を5倍に伸ばしたことが分かる。
一方、日本ABC協会のまとめによると、10年上期の日経新聞の紙媒体の部数は303万2703部だったのに対して、14年上期は276万9732部。4年で8.7%減少している。これに対して、電子版への対応が遅れた読売新聞の部数を見ると、10年上期が1001万6735部に対して14年上期は956万1503部で、減り幅は4.5%だ。電子版が「カニバリゼーション」をもたらしたかどうかは検証が待たれるところだ。