2016年4月にスタートする電力小売りの全面自由化について、全国の男女に尋ねたところ、全体の約3分の2近い64.0%が「電力会社を変えてみたい」と答えていることが、博報堂エネルギーマーケティング推進室の調査で明らかになった。
大手電力会社の「地域独占」をなくし、各家庭が電力会社を自由に選べるようになる電力小売りの全面自由化について「知っている」と答えたのは80.8%で、国民的関心の高さを示した。
電力会社「変えてみたい」が合計64.0%
家庭向けの電力小売りをめぐっては、大手電力会社に対抗するガス会社、石油元売り会社だけでなく、通信会社やIT企業、総合商社なども参入に意欲を示しており、多様なサービスが誕生するのは間違いない。
調査は博報堂が2014年9月、全国の20~60代の男女1000人にインターネットで行った。「2016年4月に電力小売自由化が実現した際、電力会社を変更したいか?」の問いには、「電気代が安くなるのであれば変えてみたい」が58.1%、「電気代が今と一緒でも変えてみたい」が5.9%と、「変えてみたい」が合計64.0%に達した。
変更時期については、「自由化後すぐに変える」が17.2%に対して、「最初に変えた人の様子を見て変える」が49.2%。「すぐ変える」と答えたのは、男性21.1%に対して、女性は12.0%と半分程度。年齢別では20代の10.2%に対して、60代は20.7%と、女性よりも男性、若者より高齢者の方が「乗り換え」に積極的だった。
電力会社を選択する時に重視するポイントは、「料金の安さ」が75.5%でトップ。2位以下は「料金メニューや契約手続きの分かりやすさ」(54.4%)、「安心安全なイメージの企業であること」(49.9%)などが続いた。
電気とインターネットのセット販売なども登場しそう
期待する「料金割引きメニュー」としては、①長期契約による割引②時間帯によって料金単価が異なるサービス③電気とガスや水道のセット販売――が上位を占め、「電気と通信(電話、インターネットなど)のセット販売」「再生可能エネルギーのみを販売する料金メニュー」など、多様なニーズがあることがわかった。
実際にこれらのニーズに合わせた新サービスは、続々と誕生しそうだ。東京電力の最大のライバルと目される東京ガスの広瀬道明社長は2015年1月の年頭あいさつで「2016年の電力小売り全面自由化に向けて、2015年度下期から具体的な営業を開始する」と表明。新たな火力発電所を稼動させ、現行の自社発電能力約130万キロワットを2020年に約300万キロワットに拡大。「家庭と業務用を合わせ、首都圏需要の約1割の獲得を目指す」という。
総合商社の丸紅は楽天と提携し、2016年から一般家庭に対する電力の小売り事業に参入すると発表している。国内に水力・風力など多様な発電所を持つ丸紅と、楽天市場などで全国に顧客網を抱える楽天が手を組むことで、「ビッグデータなども活用した新サービスを開発していく」という。
一方で大手電力会社間の争奪戦も進む
ソフトバンクテレコムとSBパワーは2014年7月から法人向けに電力小売り事業を開始しており、「自然エネルギーの比率が高い電力で、CO2の排出を抑えたクリーンな電力を提供している。最適な電力使用の提案を行うことで、企業の電力コストの低減を促進している」という。KDDIは2014年9月からマンション向けに電力小売り事業をスタート。マンションの管理組合などが契約する「一括受電」と呼ばれるサービスで、マンション入居の家庭で電気料金を約5%、共用部で最大50%割り引くプランを提供している。ソフトバンクやKDDIなどは全面自由化に合わせ、家庭向けに電力と通信料とセットで割り引くプランを提供する見通しだ。
このほか、「ENEOS」ブランドの石油元売り最大手、JX日鉱日石エネルギーは、首都圏で電力とガソリンのセット販売を始める方針を明らかにしている。通信会社とも提携し、ガソリンと電力、通信料金がセットで割引になるサービスが登場する可能性もある。
迎え撃つ東京電力や関西電力など大手電力会社も黙ってはいられない。首都圏の家庭が関西電力や北海道電力と契約することも可能となり、大手電力会社間の争奪戦が進むのは確実。新電力を巻き込み、電気料金の値下げとサービス競争が進むのは間違いない。