日本マクドナルドが窮地に陥っている。2015年1月の既存店売上高は、2001年の上場以来、最大の落ち込みとなる前年同月比38.6%減を記録した。
さらに、2015年12月期の業績予想を開示できなかった。14年7月、中国の取引先工場で期限切れの鶏肉を使用していた問題が発覚、年明けには複数店舗で異物混入が明らかになり、客離れが進んでいる。再生への道のりは、遠く、険しい。
サラ・カサノバ社長自ら頭を下げる
サラ・カサノバ社長は2月5日、東京証券取引所で、2014年12月期の決算発表会見に臨んだ。1月の異物混入問題発覚後、公の場に姿を現すのは初めてだ。冒頭、「お客様に多大なご迷惑とご心配をおかけし、深くおわびする」と陳謝。さらに1月の売り上げ減について「厳しい評価を下されたと痛感している」と述べた。
既存店売上高の前年割れは12カ月連続。特に、中国での鶏肉問題が発覚した7月以降は2ケタ減が続いている。8月は25.1%減と、この時点で上場以来最大の落ち込みを記録した。11月には12.3%減まで減少幅が縮小したが、12月、1月と再び拡大した。
当然のことながら、業績も急降下だ。日本マクドナルドホールディングスの2014年12月期の営業損失は67億円、純損失は218億円だった。営業損失は41年ぶり、純損失も11年ぶりで、こちらも記録ずくめだ。さらに「異物混入問題の影響を合理的に算定することは困難」と、2015年12月期の予想を発表しなかった。
マクドナルドの品質管理は、業界内では「業界最高水準」
一連の問題を受け、マクドナルドは何もしなかったわけではない。例えば期限切れ鶏肉問題発覚後は、すぐさま中国でのチキン生産を取りやめ、タイに切り替えた。ホームページ上で原材料の原産国を詳細に開示したほか、加工工場の動画を公開するなど、信頼回復へ向けた取り組みを進めた。
ただ「食の安全」に敏感な家族連れ客は戻りが鈍かった。追い打ちをかけたのが、年明け以降に発覚した異物混入問題。マクドナルドの品質管理は、業界内では「業界最高水準」といわれるが、それでも複数店舗で発覚したことで、客離れが一層進んだ。
異物混入のリスクをゼロにはできない
2月3日には、全店舗で一斉清掃、機器総点検を行うとともに、15万人の従業員にトレーニングを実施すると発表。第三者による清掃・点検結果のチェック、顧客対応の改善に向けたタスクフォースの設置などを明らかにした。「異物混入撲滅」を目指すマクドナルドだが、年間十数億食を提供する以上、何らかの原因によって異物が混入してしまう可能性があることは否定できない。どんなに対策を講じても、異物混入のリスクをゼロにはできない現実がある。
信頼回復を目指し、カサノバ社長は全国47都道府県を回り、客から直接、要望を聞くほか、「100円マック」の拡充、既存店舗の改装なども実施するという。
ただ、信頼回復に特効薬はない。異物混入での対応が後手に回ったとみなされたことが、現在の事態を招いただけに、品質、商品開発、店舗運営などあらゆる面で、どこまで消費者に向き合うことができるかが問われているといえそうだ。