NHKはこれまで「イスラム国」と呼称してきた過激派組織について、「過激派組織IS=イスラミックステート」と変更すると発表した。発表以降、ニュース番組でもすでにこの呼び方を使っている。
変更を評価する声がある一方、日本政府が使用する「ISIL(アイシル)」や、ほかのメディアが使う「イスラム国」「IS」など、バラバラの呼び方に混乱する人も出てきそうだ。
イスラム教徒らへの偏見を懸念か
NHKはこれまで基本的に「イスラム国」という表現を使用し、その理由を「あくまで過激派組織の呼称として『イスラム国』という言葉を使っています」などとニュース番組の中で説明してきた。
今回の変更理由は何なのか。2015年2月13日、公式サイトに掲載した発表によると、
「この組織が国家であると受け止められないようにするとともに、イスラム教についての誤解が生まれないように13日夜から原則として『過激派組織IS=イスラミックステート』とお伝えすることにしました」
と説明している。
この発表では「イスラム教についての誤解」の詳細は説明されていない。背景には「イスラム国」の呼称がイスラム教徒らへの偏見につながる、という見方があるようだ。
トルコ大使館は2月4日、公式サイトで報道各社あてに「イスラム国」の呼称を使わないよう求める文書を公開した。
「テロ組織に関する報道で誤解が生じない表現の仕方について是非検討いただき、イスラム教徒=悪人を連想させるようなことがないよう配慮いただきたいところです」
とし、「イスラム国」のアラビア語表記での省略形「DAESH(ダーイシュ)」などを使うよう求めていた。
また、名古屋モスクも「日本に暮らす大勢のムスリムへの偏見は大変深刻です」と声明を発表。民主党の中妻穣太・板橋区議は署名サイト「change.org」で「イスラム国」の呼称を中止するよう呼びかけ、14日現在で2万人以上の賛同を得ている。
今回のNHKの対応について、上記団体をはじめ、イスラム教への偏見を懸念していた人からは一定の評価をする声が上っている。