日本マクドナルドホールディングス(HD)の株価が下がらない。2014年7月に発覚した中国の食品会社が消費期限切れの鶏肉を使用していた問題で客離れが進み、急速に業績が悪化しているにもかかわらずだ。
足元の株価水準は、2500円前後。鶏肉問題の発生前の2014年6月に付けた年初来高値の2965円から15%程度の下げに踏みとどまっている。
赤字決算で、「悪材料が出尽くした」
日本マクドナルドHDの2014年12月期(通期)連結決算は、最終損益が218億円の赤字(前期は51億円の黒字)となった。赤字転落は2003年以来、11年ぶりのこと。売上高は前期比14.6%減の2223億円で、6年連続の減収。営業利益は67億円の赤字と、売上高、利益ともに大きく落ち込んだ。
業績不振の大きな原因は、期限切れ鶏肉の使用や商品への異物混入問題だ。鶏肉問題などに伴う原材料の廃棄費用や、信用の低下による売上高の減少などの影響は小さくない。問題が発覚した14年7月以降、売上高は2ケタ台の下落率が続いている。
そこに米国西海岸での港湾ストライキ。14年12月中旬からはマックフライポテトが限定販売を強いられ、年明けにはマックチキンナゲットなどへの異物混入が相次いで明らかになって、客離れが一段と深刻化した。
15年1月の既存店売上高は前年同月に比べて38.6%減と大きく落ち込み、それにより15年12月期の業績予想は見通しがつかず、「非開示」とした。こうしたことから、業績の先行きに対する懸念はますます広がっている、とみられた。
ところが、「マック株」の動きは鈍い。さすがに決算発表の翌日の2015年2月6日は、終値で前日比23円安の2580と下げたが、その後もマック株は1月13日に付けた年初来安値の2451円を下回ることがない。
ある市場関係者は、「2500円を大きく割り込む場面があると心配でしたが、今のところは落ち着いているようです」と話す。
日本マクドナルドについては、むしろ「悪材料が出尽くした」とみている証券会社は少なくないようで、2015年は「回復に向かう可能性が高い」という。
2月13日の終値は2552円と、前日比で9円上がった。しばらくは2500円前後で推移しそうだ。
27万人の個人株主に支えられているマック株
日本マクドナルドHDの株価が下がらない理由の一つに、「浮動株が少ない」との指摘がある。米マクドナルド本社と、27万人もの個人株主が発行済み株式の9割近くを占めていて、ほぼ「固定」されているためだ。
そんな個人株主の「お目当て」は、株主優待券とされる。全国のマクドナルドで使える「お食事券」がそれ。サンドイッチ、サイドメニュー、ドリンクの商品引換券が6枚ずつで1冊、100株で1冊もらえる。
マック株を保有する、ある個人投資家は「ハンバーガーやポテトなどが、S・M・Lのサイズを気にせずに選べるので使い勝手がよく、子どもとちょっと食べに行くのには便利」と話す。
マック株は、こうした多くの個人株主が株主優待券ほしさに手放さないので売り崩れるようなことが少ないようなのだ。
あるベテランの個人投資家は、「マックは初心者向けの株」と指摘する。「株主優待券がほしくて買う人は少なくないし、(証券会社なども)勧めやすい」と話す。実際に、年初来高値(2965円)をつけた2014年6月も、「株価の上昇要因は、株主優待の権利どりの期日(6月末)が迫っていたため」とみられていた。
赤字に転落したとはいえ、内部留保(利益余剰金)は13年12月末に比べて258億円減ったものの、843億円(14年12月末)を保有する。
また、前出のベテラン投資家は、信用売りの残高(量)が比較的多いことに注目している。「売り」の量が多いということは、いずれ買い戻さなければならない、「買いの量も多くなるはず」だからだ。
さらには、大株主である米国のマクドナルド本社の支援に期待する向きもある。
ただ、肝心の米国本社も2014年は世界の既存店売上高が12年ぶりにマイナスに陥るなど、苦境に立たされている。赤字決算で、今後は多くのフランチャイジー(FC)が「離反」するとの懸念もある。株価への不安材料がなくなったわけではない。
マック株を保有する、前出の個人投資家は「(自身もそうだが、12月末の)権利が確定したばかりなので、まだ手放していないというだけの人が多いのではないでしょうか」とも話している。