郵政改革問題と似た構造
ここで辣腕をふるったのが、農家出身の菅官房長官だ。菅長官は、郵政民営化の時にも積極的だった。民主党政権になってからの郵政民営化の見直し法案の時に、自民党内で造反し、筋を通したのは有名な話だ。
農業トライアングルで、自民党農協族を郵政族、農協を郵政(公社)、農水省を郵政省と置き直してみれば、郵政改革問題と似た構造であることがわかる。
おそらく、菅長官は、農協改革の意味がわかっていたので、ここ一番に力を出したのだろう。一緒にやったのが、自民党内での改革派の西川農水相だ。小選挙区でやられた意趣返しかもしれないが、西川氏も郵政民営化の時には、力業で反対グループを押さえ込んだ経験がある。いわば、郵政民営化の時に辣腕をふるったコンビが、農協改革でもみられたのだ。
安倍首相も、農協改革に力が入っていた。というのは、農協改革を任せた前農水大臣の林芳正氏が思いの外、力を発揮しなかったからだ。林氏は、安倍氏が返り咲いた2012年9月の自民党総裁戦に出馬している。いわば政敵である。しかも林氏は山口県出身で、安倍氏とは代々ライバル関係にある。この際、農協改革の出来不出来で、はっきりと林氏にダメだしをする絶好の機会であった。
こうした事情から、安倍政権の改革に対する姿勢が本物であることが強く印象付けられた。農協改革の次に何をしかけてくるのか、各方面は戦々恐々だろう。
++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣参事官、現「政策工房」会長
1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。著書に「さらば財務省!」、「日本は財政危機ではない!」(いずれも講談社)、「アベノミクスの逆襲」(PHP研究所)など。