「2億、3億と、高い物件ほどよく売れています」
どうやら、東京都内の「億ション」が中国系の富裕層に売れていることは、確かなようだ。実際に、物件への問い合わせ件数で約2割が中国人を含む外国人というケースもみられた。
前出の住宅アナリストは、「知り合いの台湾人は、都内のマンションを新築と中古とあわせて6戸も購入しました」という。「物件の購入金額も高いですが、日本はプレミアム住戸(タワーマンションなどの最上階から3層程度にある住戸)の価格と、それ以外の一般住戸の価格の差が小さく、結果的にプレミアム住戸の価格が『割安』にみえます。それもあって(タワーマンションなど)が、よく売れるんです」と説明する。
櫻井幸雄氏も、「東京の物件は、世界的な都市と比べても割安感があります。1億円は当たり前。2億、3億と、高い物件ほどよく売れています」という。外国人投資家などが求める物件は、比較的広めの100平米超の物件が多く、それも価格の押し上げ要因の一つとされる。
中国人に人気なのは、青山や赤坂、麻布、六本木などで、最近は東京五輪の開催を背景に価格の値上がりが期待できる品川や有明、豊洲などの湾岸エリアが加わった。さらに東京だけでなく、福岡市内や札幌市内でも規模は小さいものの似たような現象が起こっている。
最近は、三井不動産リアルティや住友不動産販売のように、中国人をはじめ海外の個人投資家や富裕層向けにホームページを用意したり、専用の相談窓口を設けたりして、外国人の取り込みに力を入れる販売業者も出てきた。
とはいえ、こうした販売業者はまだ、ごく一部にすぎず、「売る側」はそれほど熱心ではないようだ。前出の櫻井氏は「やっぱり日本人に買ってもらいたいという気持ちがあるようですよ」とも話す。
実際には、外国人がマンション管理組合の運営に参加してもらえる可能性は低く、また生活慣習の違いなどから他の住民とのトラブルに発展するケースもないとは言い切れない。最近は外国人の購入者が多い物件を避ける日本人が少なからずいるともいわれる。