シリアに渡航しようとしてパスポートを返納させられたカメラマンに対し、ネット上では事前にシリア行きを明かしていたことに「売名行為ではないか」といった批判も出ている。カメラマンは、そのことを否定し、2月12日に会見して経過説明などをすると取材に明かした。
パスポート返納命令を出した外務省に対し、新潟市在住のフリーカメラマン杉本祐一さん(58)が渡航や表現の自由への侵害だと反論し、ネット上でも論議になっている。
杉本さんの過去のブログ記事なども問題に
報道によると、杉本さんは、シリア入りしてもISIL(いわゆるイスラム国)から逃げてきた難民や自由シリア軍などを取材しようとしただけで、ISIL入りするつもりはなかったと訴えた。外務省に対しては、法的措置も検討しているという。ジャーナリストらからも、政府の決定はおかしいとして批判の声が上がっている。
一方で、ネット上では、「他人に迷惑かけてまで求めていい自由なんてないよ」などと決定を支持する声が多いほか、杉本さんが事前にシリア行きを明かしていたことに対しても疑問が出ている。
「売名行為ではないか」との指摘さえも出ており、元フジテレビアナウンサーの長谷川豊さんも、Q&Aサイト「教えて!goo」で同様な見方を示した。本気で取材したいのなら、旅行などのために海外へ行くとして、秘密裏にシリアに潜入しようとするはずなのに、杉本さんがそうしなかったのが理由だという。こうした見方は、ほかのジャーナリストらもしている。
また、杉本さんの過去のブログ記事なども問題になっている。2007年ごろのブログを見ると、自民党や安倍晋三首相を攻撃しているほか、「共和国(北朝鮮)」、「日本海(東海)」、そして北朝鮮のマンギョンボン号について「在日朝鮮人の、命の航路」といった表現があった。そして、杉本さんは、自治労や教職員組合、市民団体など127か所で講演していた。
「地方版に載る前提でインタビューを受けた」
講演依頼のプロフィールページでは、料金の目安としては、15万円と書かれていた。ただ、「シリア内戦に関するお話と映像については、講演料金が29万円になります」となっている。
杉本祐一さんは、J-CASTニュースの取材に対し、事前にシリア行きを明かしたことが売名行為であることを否定した。
「当初は、静かにシリアに行くつもりでした。それが、朝日新聞新潟支局がインタビューしたいと来て地方版に記事を載せ、1日置いて、地元紙の新潟日報が朝日の記事を読んでインタビューしに来ました。それらの記事をどこかの機関が外務省に送ったので、行かないでほしいと来たのでしょう。地方版に載る前提でインタビューを受けたわけですが、今思えば軽率だったと思います」
そして、杉本さんは、2月12日に外国特派員協会で会見し、これまでの経過や政府への思いについて話すことを明らかにした。
シリア内戦などの講演は、依頼があれば行くものの、今は依頼がないという。ブログで書いたことについては、「今はネットをほとんどしないので、ネットの騒ぎについては知りません。しかし、それを気にしていたら、だれも発言できないと思います」と話した。
今回のシリア行きがもし実現した場合について、杉本さんは、地元などのテレビ局に売り込むつもりだったという。なお、提供予定だったものについては、「イスラム国には関心がなく、接触したり入ったりつもりはありませんでした。あくまでも、12、13年にも行った自由シリア軍の取材を続けていくことを考えていました」と強調していた。