理化学研究所は2015年2月10日、文部科学省で会見を開き、STAP細胞をめぐる研究不正が認定されている小保方晴子氏について、懲戒解雇相当と発表した。しかし、研究費の返還請求や刑事告訴は「するかしないかを含めて、これから検討する」と述べるにとどめた。
「これで幕引きではない」と強調するが、「検討」についても「いつまでに結論、とは言えない」とするなど、あいまいな表現ばかりが目立ち、形を整えただけ、という見方も出てきそうだ。
ES細胞混入の経緯は特定できないのに窃盗で刑事告訴?
理研は竹市雅俊・元発生・再生科学総合研究センター長をけん責(給与の10分の1を3か月分自主返納)、丹羽仁史・元同センター多能性幹細胞研究プロジェクトリーダーを文書による厳重注意する処分を下した。すでに退職している小保方氏は懲戒解雇相当、若山照彦氏は出勤停止相当とした。
さらに小保方氏に対しては、不正の検証実験にかかった費用1500万円をはじめ、採用からこれまでの人件費、STAP細胞に関する研究費などの経費を返還要求することを検討するとした。
ただ、会見に出席した堤精史・人事部長と加賀谷悟・広報室長は「するかしないかを含めて検討する」と何度も断った。検証実験以外の経費の具体的な金額は明らかにせず、「議論に上がっており、これから検討を進めていく」と述べるにとどまった。
刑事告訴については「法令的なことをこれから弁護士に相談し、窃盗や威力業務妨害など、何に当たる可能性があるのかを検討する」という。しかし、これまで理研はES細胞の混入について経緯が特定できないとしてきた。にもかかわらず窃盗での刑事告訴を明示したことの整合性を問われると、「誰を、何で告訴するのかを現段階で限定しない。あくまで小保方氏を含め、告訴に値するのかどうかを含めて検討する」とあいまいに回答した。
一連の検討は「長引かせるつもりはない。1~2か月で結論をつけたい」としたが、具体的な期限は設けられないという。
なぜ小保方氏の退職届を受理したのか?
小保方氏はすでに退職し、本来は処分の対象ではない。堤人事部長は「懲戒処分の対象ではないものの、社会的影響を考えて公表せざるをえないと判断した」と説明する。
ではなぜ14年12月に退職届を受理したのか。受理発表時も小保方氏を処分できなくなると記者から追及されており、今回も記者から「処分の逃げ得といった形で、悪い前例となったのではないか」と改めて指摘を受けた。これに対し、堤部長は「受理するか否かはその時の状況を踏まえて判断した。今回の審議では本人のかかわった責任をしっかり検討した」と答えるにとどまった。
会見の後半で加賀谷広報室長は「これで幕引きというつもりはない」としたが、野依良治理事長ら役員の責任については、「すでに給与の一部を自主返納しており、今後の改革プランをしっかり進めていくことで責任を取っていると判断している」と説明している。