過激派組織「イスラム国」による人質事件で、日本政府が「イスラム国」とどのように解放交渉を試みていたかについて、ロイター通信が報じた。
日本政府は、表向きは「テロには屈しない」という姿勢を貫き、交渉の経緯も明かしていないが、記事によると、一時は「イスラム国」幹部と交流があるイスラム学者の中田考・同志社大学客員教授に「仲介役」を依頼していた。
日本政府からメッセージ託されていたが「イスラム国」に伝えなかった?
ロイター通信は2015年2月9日未明(日本時間)、「急進派の学者が人質危機のピークで日本政府にイスラム国とのチャンネルを提供していた」と題した記事を配信した。
中田氏や関係者の話、記録を検証した結果として、中田氏が、
「1月の危機のピーク時に、外務省からメッセージを集団(イスラム国)に伝達するように依頼された」
とする内容だ。ロイターは、日本政府が人質解放に向けて「イスラム国」と対話する用意があったように見えるという点で、「テロには屈しない」という表向きの方針と齟齬がある点も指摘している。
「イスラム国」が72時間の期限を区切って身代金を要求した動画の存在が明らかになった2日後の1月22日、中田氏は東京・有楽町の日本外国特派員協会で開いた会見で、
「これまで、(自らが北大生に「イスラム国」行きを勧めた容疑で警察の捜査を受けているため)できる限り(「イスラム国」と)コンタクトをしないようにしていたが、コンタクトが取れることは確認している」
「日本政府から直接の要請は私にはない。しかし、コンタクトはないわけではない」
などと述べ、「イスラム国」との折衝に含みを持たせていた。
ロイター記事によると、会見前日の1月21日に具体的な動きはあった。日本政府のテロ対策タスクフォースが、
「2人の日本国民に危害を加えず、直ちに解放することを強く求める」
とする「イスラム国」宛てのメッセージを、関係者を通じて中田氏に送ってきたのだという。だが、中田氏はこのメッセージを「イスラム国」側に転送すると「対話の意志なし」として人質が殺害されると考え、転送しなかった。その後、外務省からの状況確認はなかったという。