伊藤忠商事は2015年、資本提携先のタイ財閥チャロン・ポカパン(CP)グループと共同で、中国の政府系複合企業、中国中信集団(CITICグループ)の傘下企業に計1兆2000億円を出資する。
このうち伊藤忠の出資分は約6000億円で、日本企業による対日投資としては過去最大規模となる。ただ、市場関係者からは早くも「出資額が大きすぎる」と懸念の声も出ており、どう相乗効果を生んでいくのかが今後のカギを握りそうだ。
13年度の連結純利益約7300億円、時価総額は約5兆円
伊藤忠が出資するのは、中国政府が100%出資するCITICの中核子会社「中国中信」。同社は香港証券取引所に上場しており、2013年度の連結純利益は約7300億円、時価総額は約5兆円に上る。信託や証券など中国国内の金融をメーンに、不動産・インフラ、建設・プロジェクト、資源・エネルギー、アルミホイール製造、IT、通信、医療など幅広い事業を手がけている。
まず4月、CPと折半出資する共同出資会社が、CITICから約10%の普通株式を取得。さらに10月、13.4%分相当の普通株式に転換可能な優先株式を引き受ける。3カ月以内に普通株式に転換し、中国中信は共同出資会社の持ち分法適用会社となる。
伊藤忠の岡藤正広社長は1月20日に記者会見して発表した中で、「中国の人口の多さを抜きにしては語れない」と資本・業務提携の意義を説明。1972年の日中国交正常化後、伊藤忠はいち早く中国に進出し、今も中国ビジネスを強みとしており、流通大手の頂新グループに2割、アパレル大手の杉杉集団に3割出資してきた。さらに今回、CITICと広範に協業を深めることで、「非資源」分野を中心に、さまざまなビジネスチャンスを創出できるとふんでいる。
一方、中国政府は国有企業改革を進めており、CITICも主力の金融以外を伸ばし、総合商社のような形態になることを目指している。伊藤忠、CPの持つ世界的なビジネスネットワークを活用したい考えのようだ。