トヨタ自動車が3年連続で維持してきた世界販売台数首位の座を、2015年は独フォルクスワーゲン(VW)に明け渡す公算が大きくなっている。トヨタは1月21日、ダイハツ工業、日野自動車を含む2015年の販売計画を、前年実績比8万台減の1015万台にすると発表。VWは新興国を中心に勢いを増しており、初の首位をうかがう。
トヨタの計画によると、国内販売はトヨタ(単体)が前年比7%減の145万台、ダイハツが15%減の60万台、日野が9%減の5万台で、グループ全体では9%減の210万台になる見通し。
VWグループは2014年、1000万台の目標を前倒しで達成
前年に押し上げた消費増税前の駆け込み需要効果がはげ落ちるほか、軽自動車税増税の影響も出る。一方、海外ではトヨタ2%増の773万台、ダイハツ2%減の20万台、日野は10%増の12万台で、グループ全体では2%増の806万台となる見込みだ。米国では景気回復を追い風に、ピックアップトラックなどが好調に推移するとみるが、中国を中心とする新興国では伸び率が鈍化するとみる。
販売計画と同時に発表した2014年の世界販売実績は、前年比3%増の1023万1000台で、3年連続で世界首位の座をキープした。国内ではトヨタが2%減の155万4000台、ダイハツが7%増の70万8000台、日野が19%増の5万7000台で、トータルでは前年を1%上回る232万台だった。一方、海外はトヨタ3%増の759万3000台、ダイハツは横ばいの20万7000台、日野は3%減の11万1000台で、トータルでは3%増の791万1000台だった。
トヨタは近年、VW、米ゼネラル・モーターズ(GM)と激しい首位争いを演じている。3強の中で、特に勢いがあるのがVWだ。VWグループは2014年、世界で前年比4%増の1014万台を販売。2018年までとしていた1000万台の目標を前倒しで達成した。
トヨタは2013年度から3年間、工場新設凍結
強みは、地元である欧州に加え、世界最大市場である中国だ。日本勢に先駆けて進出した利点を生かし、2014年は前年比12%増の368万台を販売。GMを15万台上回り、2年連続の首位に立った。
トヨタも中国で103万台と初めて100万台を突破した。2012年には尖閣諸島をめぐる日中対立で、一時大きな打撃を受けたが、その影響はなくなっている。ただそれでもVWの3割弱にとどまり、ほぼ同じ伸び率でも、台数では大きな差が付いてしまう。VWは今後、中国国内で大規模工場を新設する予定で、「中国シフト」を強化している。
トヨタは2013年度から3年間、工場新設の凍結を掲げ、既存工場を最大限生かした収益力の向上に取り組んでいる。リーマン・ショック前のように台数を追い求めてはいない。最近、トヨタ幹部は「凍結解除」をにおわせているが、今解除しても、すぐに生産を開始できるわけではなく、建設を決めてから数年先になる。
もっともトヨタは現状を「意思ある踊り場」(豊田章男社長)と位置づける。長期的な成長持続のための「種まきの時期」というわけだ。種まき期間が終わった後、世界の競合メーカーとの本当の戦いが始まる。