外食チェーンの業界団体「日本フードサービス協会」によると、2014年の外食産業の売上高(全店ベース)は前年比0.2%減だった。前年割れは3年ぶり。日本マクドナルドなどのファストフードが不振だった半面、ファミリーレストランなどは堅調。デフレの勝ち組が衰え、「ちょっとぜいたく」な店に客が集まる外食産業の明暗が鮮明になってきた。
同協会のカテゴリー別では、「ファストフード」「パブ・居酒屋」が前年割れで、それ以外は前年を上回った。ファストフードは2.1%減でマイナスは2年連続。パブ・居酒屋は5.0%減で6年連続の減少だ。
客数8.4%減、売上高は0.2%増という吉野家
ファストフードは消費増税などでただでさえ厳しい状況の中、2014年はその王者である日本マクドナルドがオウンゴールで自ら客を遠ざけた年だった。7月に期限切れの中国産鶏肉を「チキンマックナゲット」に使用した問題が発覚したうえ、年明けには商品への異物混入問題が発生。それぞれ会社側の対応がもたつく間に消費者がいらだちを募らせ、重要ターゲットであるファミリー層が店に足を運ばなくなってしまったのだ。
マックの不振は明確で、2014年7月以降の前年同月比の既存店売上高は、12月まで6カ月連続で2ケタ減。8月の25.1%減を底に減少幅が縮小傾向にあったところ、12月は21.2%減と再び20%超の減少幅になってしまった。
ただ、ファストフードの中でも牛丼各社は、全体的に単価を上げた効果で売上高は減っていない。例えば吉野家の3~12月(既存店ベース)は客数こそ前年同期比8.4%減だが、売上高は0.2%増えた。
パブレストラン・居酒屋は売上高、店舗数、客数、客単価いずれも前年を下回った。若者の酒離れや宴会需要の低下などが影響しているようだ。居酒屋チェーン最大手のワタミは、2015年3月期連結決算の業績予想で、純損益が30億円の赤字と、2期連続の赤字を見込む。ワタミはアルバイト出身の清水邦晃常務(44)を3月1日付で社長に昇格させ、立て直しを図る。
「プチぜいたく」にお金を出しても良いという消費者
一方、ファミリーレストランは3.2%増と、3年連続で前年を上回った。来店客数は0.3%増と横ばいだが、客単価が2.9%増と伸びていることが売上高の増加に貢献した。実際、「ガスト」「バーミヤン」「ジョナサン」などを展開する最大手、すかいらーくグループの既存店売上高は2014年に前年比1.6%増えたものの、客数は1.9%減っていた。客単価が3.6%伸びて補った形だ。すかいらーくは「高単価商品の販売が好調なほか、サイドメニューやデザート、ドリンクバーの利用が増加した」としている。
ロイヤルホストも昨年(既存店ベース)は客数が3.3%減ったが、客単価が4.1%伸びたことで売上高は0.6%増とプラスになった。いすやテーブルなども高級感が出るようにしつらえ、食材にもこだわって単価を高めに設定している。3000円を超えるステーキなど強気のメニューをそろえるが、「プチぜいたく」にお金を出しても良いという消費者の支持を得ているようだ。
伸びていると言えば、焼き肉だ。2014年の売上高は8.4%増。客数(4.7%増)、客単価(3.6%増)ともにアップしている。もともと他より客単価が高いジャンルだけに、ぜいたくを楽しみたい層が足を運んでいることが数字に表れているようだ。
この動きに着目しているのが、「洋服の青山」を展開する紳士服専門店最大手の青山商事。紳士服需要が低迷するなか、経営多角化で焼き肉事業に注力しており、「焼き肉きんぐ」チェーンを今後の成長分野と位置付ける。洋服の青山店舗の余剰地の有効活用にも焼き肉きんぐを生かすといい、その動向に他の外食チェーンも神経をとがらせている。