日本放送協会(NHK)の本部にあたる、老朽化で建て替えを検討している東京・渋谷区神南の「NHK放送センター」の移転候補地に、現在地から1キロメートルほど離れた「神宮前」があがっている。
青山学院大学(青山キャンパス)の向かい側にある国連大学本部ビルの裏手にあたり、現在は総合住宅展示場「TBSハウジング渋谷 東京ホームズコレクション」が使用。2008年までは青山病院があった約1万7000平方メートルの敷地だ。
放送センター周辺は「NHK村」といっていいほど
候補地の「神宮前」の土地について、管理する東京都財務局財産運用部は「(旧青山病院の跡地は)現在、住宅展示場になっていますが、その後は『都市再生ステップアップ事業』として、再開発を考えている土地になります」と説明。「検討していることはいろいろありますが、現時点では何も決まっていません」と話している。
現在、住宅展示場のある一帯はJR渋谷駅と東京メトロ・表参道駅の中間地点で、近くには国連大学や青山ブックセンター、おしゃれなレストランやショップが立ち並んでいる。にぎやかな街だが、国道246号線(青山通り)から裏手に入っていくと、落ち着いた雰囲気のある店が少なくない。
一方、現在のNHK放送センター(渋谷区神南)の周辺は、渋谷駅から放送センターに向かう、センター街や公園通りには若者などでにぎわうカフェや飲食店、カジュアルウェアやCDなどのショップにライブハウスなどが林立。若者文化の発信地であり、渋谷公会堂やNHKホールではコンサートや番組の公開収録などが楽しめる。
放送センターは代々木公園や原宿・表参道に抜ける「通り道」にあるため、学生らのデートコースにもなっている。
当の放送センターは代々木公園の南側にあり、敷地面積はじつに約8万2000平方メートルもある。かつての米軍居住区「ワシントンハイツ」の一部で、1964年に日本に返還された後、東京五輪の選手村や代々木競技場などとともに建設された東京五輪の放送センターが前身だ。
そこに、本部機能を担う地上23階建ての本館や、番組収録用のスタジオがある東館、報道部門が入る北館など4つのビルとNHKホールなどが建ち、さらに周辺エリアにはNHKエンタープライズやNHKグローバルメディアサービス、NHK出版などの子会社が多数点在。この一帯は「NHK村」といってもいいほどで、多くの人が働いている。
放送センターの移転について、地元商店街の関係者は「まだ具体的な話を聞いていませんし、(商店街としても対策などは)検討していません」というが、影響は小さくないとみられる。
過去には築地市場の跡地も候補に・・・
NHK放送センターの建て替え・移転については、2011年ごろから検討課題にあがっている。NHKの籾井勝人会長も、2014年1月には「2020年はわたしの目標だが、本当にできるかどうかは時期的にはなかなか難しい。ただ、建て替えなくて、直下型地震が来たといって、放送ができなくなると我々の義務を遂行できなくなる」と語っていた。
日本テレビやTBS、テレビ朝日といった在京キー局が続々と新社屋に建て替え・移転するなか、NHK放送センターは最も古い東館が間もなく半世紀を迎えるなど、さすがに老朽化が目立ってきた。
また、衛星放送の開始や地上放送のデジタル化といった業務拡大で社屋が手狭にもなっている。2016年の東京五輪招致の際に、築地市場跡への移転プランが持ち上がったが、五輪招致の失敗で流れてしまったこともある。
新センターは免震機能を強化するほか、「8K(スーパーハイビジョン)」などの次世代放送への対応を図るとされる。NHKは建物関連費用が約1900億円、番組制作の設備関連費用が約1500億円の、総額約3400億円の建設費を想定しており、2014年度末見込みで約1000億円をすでに積み立てている。
NHKはJ-CASTニュースの取材に、「建設予定地については何も決まっていません」と話すが、2015年1月30日付の産経新聞などによると、「立地のよさなどから神宮前が選ばれたとみられる」としている。完成は2025年を予定。ただ、現在地での建て替えの可能性も残されているという。
インターネットには、
「渋谷じゃなきゃダメな理由ってなに? 地方でいいんじゃない」
「渋谷のどこにそんな土地があったの? そっちのほうが驚きだよ」
「NHKは大きくなりすぎた。建て替える前に公共性のある部分と商業放送の部分などに分けるべきだろう」
「今の場所でいいじゃん。何で移転する必要ある」
といった声が寄せられている。