東京の弁当路上販売に大逆風 認可制に変更で、「廃業」か「値上げ」

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   東京都心のオフィス街などで、サラリーマンらに重宝がられている「弁当の路上販売」への規制がいよいよ厳しくなる。

   弁当の路上販売をめぐっては、食中毒の発生が懸念されるなど衛生上の問題が指摘されており、東京都が規制のあり方を検討していた。2015年2月18日にも開会される第1回定例都議会で改正法案の成立を目指す。ただ、これで「安い弁当」が消える心配もある。

東京都「衛生管理上、必要な措置を講じた」

弁当の路上販売への東京都の条例が厳しくなる!(15年2月6日編集部撮影)
弁当の路上販売への東京都の条例が厳しくなる!(15年2月6日編集部撮影)

   東京都は2015年2月4日、議会に提出する予定の議案の一つ、「食品製造業等取締条例の一部を改正する条例」について、都議に事前説明を行った。

   東京都心、千代田区や中央区、港区などのオフィス街には昼食時近くになると、ワゴンや折り畳みの長机が続々と集まり、幕の内や中華、牛丼にカレーライスといった弁当が並ぶ。500円前後と安く、あっという間に行列ができる。

   こうした弁当の路面販売は、現行は「届出制」。すぐに移動できる「行商」扱いなので、道路使用許可なども原則不要。店舗販売と違って食品衛生管理者の確保もいらないこともあり、急増してきた。

   これが条例の改正で「認可制」へと変更され、一般の飲食店に近い基準の食品衛生管理が求められることになる。

   条例改正について、東京都は消費者保護を目的に、「しっかりした衛生管理上、必要な措置を講じたい」(福祉衛生局)と説明する。

   具体的には、事業者(行商)を現在の届け出制から許可制に改めるほか、保冷剤などで温度管理ができる「保冷容器」を使用することや所定の講習を受けた食品衛生責任者を置くことを義務づける。また、条例に違反すると営業停止など行政処分の対象になるという。

   東京都は条例で、行商を「人力により移行しながら販売すること」と定めており、保健所に行商届と証明写真、届出手数料を納めるだけで誰でも営業できる。路上で売られている弁当の多くは、飲食店や弁当屋などからの仕入れ販売だ。東京都によると、こうした弁当を扱う行商人は、都内に538人が登録されている(2013年12月末現在)。

   たとえば条例改正後、この538人が引き続き弁当を路上で販売したいのであれば、まず保健所の「認可」を受ける必要があるわけだ。

   ちなみに、クルマで弁当を販売している人も少なくないが、この場合はクルマの設備基準などを満たす必要がある。「『行商』にあたらないことや、保健所から別の許可を受けているので(条例改正後も)変わらず、営業できます」と話す。

弁当の路上販売で食中毒が発生したケースはない?

   今回の条例改正は、弁当の路上販売での衛生状態が問題視されたことがきっかけ。路上販売は、店舗内やクルマでの販売と比べて、天候や直射日光、路面からの反射熱といった影響を受けやすいためだ。

   とはいえ、弁当の路上販売で食中毒が発生したケースは、今のところないといってもいいかもしれない。

   2014年2月14日に公表された東京都食品安全審議会の「弁当等に関する食品販売の規制の在り方について」によると、東京都内の2012年に弁当による食中毒の発生件数は8件、患者数で約500人だった。ただし、この数字はコンビニエンスストアや仕出しなどの弁当を含んだもの。東京都は、「路上販売の場合、不特定多数の人が買っているため、腹痛などを起こしても状況が把握しづらいことがあります」(福祉保健局)と話し、数字は「推定値」という。

   どうやら弁当の路上販売の消費者への影響については、実態がつかめていないようなのだ。

   消費者の「食の安心・安全」への意識が高まるなか、最近は異物混入などの事件が起っており、必ずしも店舗販売だから安心、路上販売だから安心できないとはいえない状況にもなってきた。

   その一方で、条例改正で規制が強化されることで人件費や事務管理コストが上昇すれば、安さが売りの路上販売の弁当も値上がりしたり、廃業に追い込まれたりするところも出てきそうだ。便利に利用していたサラリーマンにとっては痛い。

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