節分の日といえば「恵方巻」。その年の恵方(幸運を招く方角)を向き、願い事をしながら黙って太巻きを丸かじりする風習だ。
もともとは関西地方で行われていたものだが、今やすっかり日本の風習となりつつある。実はこの「全国区化」には「セブン-イレブン」が大きく貢献したとされている。
セブン-イレブン現・執行役員が加盟店オーナーと
恵方巻の起源には諸説あるが、主流となっているのは、江戸末期に大阪・船場の商人が商売繁盛などを祈願する風習として始めたというもの。後に廃れたものの「大阪鮓商組合」「大阪海苔問屋協同組合」などの販売促進もあり、関西地方ではなじみのあるものとなっていた。
そんなローカル文化を「全国区」にしたとされているのが、セブン-イレブンだ。同社公式サイトの豆知識ページによれば、1989年に広島県内の一部店舗で販売をしたのがきっかけだったという。
「その当時、関西の風習としてあった『節分の日にその年の縁起のいい方角(恵方)を向いて無言で太巻き寿司をまるかぶりする』という情報にもとづいて恵方巻を一部の店舗で販売したのが始まりです。『縁起のいい風習』としてお店で紹介しながら、翌年より販売エリアが広がり、95年には関西以西の地区に、そして98年には全国のセブン-イレブンで恵方巻を販売するようになりました。こうして一部地域の食文化が全国へと広がり、今ではすっかり節分の定番のお寿司として定着しました」
なお、最初の販売を手がけたのは、現在執行役員を務めている野田靜眞さん。「野田の担当していた加盟店のオーナーが関西出身の方でした。風習のことを聞き、協力して売り出してみようということになったのです」(セブン-イレブン・ジャパン広報担当者)。98年の全国販売時は合計で約35万本を販売したという。それが現在では約19倍の約670万本(2014年)を売り上げているというから驚きだ。
恵方巻の商品化は「ファミマが先」
ちなみに恵方巻の販売自体は、セブン-イレブンよりもファミリーマートのほうが先だった。広報担当者によれば「1983年に大阪府と兵庫県で販売したのが最初です」とのこと。ただ全国販売については、日本マーケティング研究所のレポートに「ローソンが01年、ファミリーマートが03年から全国発売で追随した」とあり、コンビニではセブン-イレブンがいち早く始めたものと見られる。
調査会社「マイボスコム」が毎年実施しているアンケートでは「恵方巻を知っている」という人の割合は07年に90%を超え、14年には96.8%(10658人中)に達した。「食べたことがある」という人の割合も05年には約半数だったが、14年には75.9%(10314人中)にのぼっている。
特にここ数年は「恵方巻商戦」が盛り上がりをみせ、メディアもこぞって「変わり種」などを取り上げている。ツイッターやブログでも芸能人が「食べた」報告をするなど、関西発の風習は着々と定着しているようだ。