「メンツにこだわって旗を降ろせないだけ」との指摘も
あくまでも自らのシナリオに固執する日銀だが、筋書き通りに「2015年度を中心とする期間」に2%に達したとしても、異次元緩和を導入した当初の目論見からは既に遅れているといわざるを得ない。日銀執行部は導入時、「2%は2年ぐらいで達成しなければいけない」(岩田規久男副総裁)と強調し、2015年春ごろの達成を当然視していたからだ。
だが、原油価格の下落や消費増税後の景気低迷で目算が狂ったのは誰の目にも明らか。黒田総裁は1月21日の記者会見で「2015年度を中心とする期間」について、「2015年度中とは言っていない。(2016年度にずれこむ)若干の余地はある」「原油価格の動向によって多少前後する」と述べ、達成に3年を要する可能性を認めた。
記者からは「2016年度なら3年かかることになる。『2年で2%』という日銀のコミットメントを弱めたのか、それとも始めからそういう意図だったのか」と質問が投げかけられ、黒田総裁が「始めからそう申し上げていた」と気色ばむ場面もあった。
日銀は正式には「2年程度の期間を念頭に、できるだけ早期に2%の物価安定目標を達成する」と掲げていることから、黒田総裁は「(2年後の)2015年4月に2%になるとか、ならないといけないと言ったことはまったくない」と語気を強め、目標達成が2016年度にずれ込んだとしても約束破りにはならないと強調した。
4月以降、2年で目標を達成できなかったにもかかわらず「2年程度を念頭」と唱え続けるのは説得力に欠け、市場では「メンツにこだわって旗を降ろせないだけ」(アナリスト)との厳しい見方もあるが、日銀は「期限を区切ることでデフレ脱却に対する日銀の本気度を示す」(幹部)として当面、修正する気はないようだ。
もちろん、日銀がとにかく2%達成を急げばよいかというと、そうとも言い切れない。異次元緩和による急激な円安など、大規模な金融緩和による「負の側面」もクローズアップされ、これ以上の緩和拡大には懸念が根強いためだ。
目標を修正すれば日銀の本気度が疑われ、緩和拡大には副作用がつきまとう。丸2年を迎える異次元緩和は袋小路に入りつつあるようにも見える。