東京・千代田区の朝鮮総連中央本部ビルの売却先に、山形県酒田市のグリーンフォーリストという貸し倉庫会社が登場した。高松市の不動産会社マルナカホールディングスが22億円で落札した朝鮮総連本部ビルを44億円で購入したというのだ。しかも、グリーンフォーリストと朝鮮総連はビルの賃貸契約を結ぶのだという。
代表取締役2人を含む社員3人、資本金300万円とされる貸し倉庫会社がどうやって44億円もの資金を調達できたのか、なぜ朝鮮総連と賃貸契約を結ぶのか、謎に包まれている。
酒田市では会社の存在を知っている人は少ない
「まさか酒田市が朝鮮総連売却問題の舞台になるだなんて、誰も想像できませんでしたよ。グリーンフォーリストですか?酒田で存在を知っている人は少ないと思いますよ」
そう話すのは酒田商工会議所の担当者だ。グリーンフォーリストは2007年創業で、賃貸倉庫業として酒田商工会議所に会員登録されている。登録の際には事業の実績があるかどうかが審査され、実際に倉庫を借りている業者も存在したため会員になることができた。しかし、現在も事業実績があるかといえば「わからない」のだという。
「会報を毎月郵送で届けていますが、不在ということではないようですので、管理はされているのではないかと思います」
J-CASTニュースが酒田商工会議所から聞いたグリーンフォーリストの電話番号にかけてみたが、誰も電話に出なかった。こんな会社が朝鮮総連本部のビルを購入し、朝鮮総連に賃貸するのだという。
今回の朝鮮総連本部ビル売却問題はおおよそこんな流れだ。朝銀信用組合が1990年代から次々に破綻し、不良債権が膨らんだ。債権を引き継いだ整理回収機構は事実上の融資先である総連に返済を求めたものの返却能力が無いことがわかり債権回収の一環として総連ビルを競売にかけることになった。
鹿児島の宗教法人が13年3月に約45億円で落札したものの資金調達ができずに断念。その後、約50億円でモンゴルの企業が落札するが書類が揃わず、ダミー会社の疑いが掛けられ資格を失うことになった。この時に次点だったのが22億円を提示した高松市のスーパーマーケット経営で不動産業のマルナカHD。14年11月に売却が行われた。この時にマルナカHDの代理人弁護士は「総連に貸したり売ったりすることはない」と明言していた。それが、報道などによれば、15年1月下旬、グリーンフォーリストへ44億円で売却することを決めたのだという。
仲介役になったのは香川県丸亀市出身の元参院議員といわれ、雑誌のインタビューで、総連の議長とは国会議員時代から知り合いであり、総連ビルを現状のまま使いたいと希望していたため、継続使用を考えてくれる買主を仲介した、などと語っている。
「グリーンフォーリストの経営者は記者会見を開け」
不可解な状況をどう見るのか、紀藤正樹弁護士に話を聞いた。
グリーンフォーリストのような規模の会社が、報道にあるようにどうやって44億円もの資金を調達できたのかが興味深い、という。不動産業界では売買の際にダミー会社を噛ませることは珍しい事ではなく、今回の一連の流れを見ていると、朝鮮総連に現在のビルを継続的に使用させることが当初からの目的で、それに向かって売買が行われたと疑われてもおかしくない、と分析した。
結果的に利益を得たのは落札価格の倍で売ることができたマルナカHDであり、現在の総連ビルに引き続き入居できるだけでなく債権の一部が帳消しになった総連。損をしたのは総連をビルから追い出そうとして失敗した整理回収機構。総連ビルを22億円で売却したことは国民の税金が失われたに等しい、というのだ。そして今回の売買に関しては様々な問題が残っていると指摘した。
マルナカHDとグリーンフォーリストがどういうカネの流れをさせたのか、収支報告をきっちりできるのかどうか、ガラス張りにできるのかどうか。それができなければ税務署が出動することになる。また、不動産取引でダミーを噛ませるのは違法ではないが、モンゴルの会社がダミーの疑いがあるという事で入札から外した経緯があるため、もしグリーンフォーリストがダミーだと分かった場合には整合性が崩れ社会的な問題になりかねない。
「これだけ社会が注目している売買ですので、グリーンフォーリストの経営者は記者会見を開き、購入の意図や資金の調達といったことを明らかにすべきですね。話はそれからということになると思います」