シリア全土に最も危険度高い「退避勧告」出たのは2011年5月
読売記事で指摘されているとおり、外務省は1月21日に
「いかなる理由であっても貴社関係に日本人報道関係者のシリアへの渡航を見合わせるよう、強くお願いします」
とする要請文を霞クラブ(外務省を担当する記者クラブ)加盟社、日本新聞協会、東京写真記者協会、テレビ・ニュース映画協会、日本雑誌協会に送っている。外務省がシリアに関連して報道機関に注意喚起するのは、これで11年5月以降10回目だ。
外務省が出している渡航情報では、「十分注意してください」「渡航の是非を検討してください」「渡航の延期をお奨めします」「退避を勧告します。渡航は延期してください」の順に危険度が高くなる。シリアについては、2011年4月から全土で最も危険度が高い「退避を勧告します。渡航は延期してください」が出ている。
そういった中でも、各社はシリア国内での取材を続けてきた。例えば読売新聞は14年6月30日の朝刊で、シリア外務次官との単独インタビューをダマスカス発で掲載。事務次官はイスラム国対策として「イラクの軍や情報機関と連携を強化した」などと語った。産経新聞も、14年12月にはダマスカス発の共同通信配信記事を掲載している。
単純に「退避勧告が出ている=記者を退避させる」とした場合、朝日新聞のシリア入りを批判的に報じたことと、自社紙面にダマスカス発記事を載せることとの整合性が問われることになりそうだ。
こうした中で、独自の方針を打ち出しているのがフランスのAFP通信だ。14年9月23日付の「記者コラム」によると、同社はダマスカスに支局を持つ唯一の国際通信社で、シリア人記者が常駐している。政府が支配している地域には記者を送ることがあるが、13年8月以降は、「危険すぎる」として、反体制派が支配している地域に記者を送ることをやめた。
日本のメディアでは、社員を取材に出せない地域はフリージャーナリストがカバーすることはしばしばだが、AFPでは、
「フリーの記者がシリアに行って取材してきた情報も写真も映像も、私たちは使わない」
という方針を定めている。