民間の信用調査機関、帝国データバンクによると、2014年はバブル期以来24年ぶりに上場企業の倒産がゼロとなった。倒産件数も前年比11.1%減の9180件と、2006年以来、8年ぶりに1万件を下回ったほか、負債総額も32.3%減の1兆8678億円となり、戦後最大だった2000年(21兆8390億円)の10分の1以下となるなど、倒産で見る限り、戦後屈指の好景気ぶりを印象づけた。
日銀の異次元の金融緩和と政府の財政出動などアベノミクス効果とみられるが、円安を原因とする倒産は345件と前年(130軒)の2.7倍に増えており、楽観はできない。
建設業の倒産が大幅に減る
上場企業の倒産がゼロとなったのは、バブル期だった1990年以来となる。バブル期は1987年から1990年まで4年連続で上場企業の倒産がゼロとなっており、好景気だった事実を裏付けているが、2014年はそれ以来の好成績となった。帝国データバンクの1964年以来の50年にわたるデータの中でも、上場企業の倒産ゼロは2014年を含め過去5回だけだ。これまで最も上場企業の倒産が多かったのは、リーマンショックが起きた2008年の33件だった。
倒産件数、負債総額とも歴史的に小さな数値となり、2014年は企業にとって経営環境の改善が目立つ1年だった。帝国データバンクは①日銀の金融緩和や政府の財政出動により、企業の資金調達環境が改善した②中小企業金融円滑化法終了後も金融機関の支援が継続し、経営不振企業の倒産を抑制した――などが要因とみている。
いずれもアベノミクスの効果と言える。とりわけ中小企業が多い建設業の倒産が、消費増税前の駆け込み需要や公共事業の増加で前年比20.8%と大幅に減ったため、倒産件数や負債総額の減少に結びついたという。
倒産の小型化に拍車
一方、気になる現象も起きている。民主党政権時代の2011年から2012年にかけ1ドル=75円台まで進んだ円高が、アベノミクスで1ドル=120円前後まで戻った円安の影響で、中小企業を中心に円安が要因とみられる「円安関連倒産」が345件と、前年(130件)の2.7倍に急増していることだ。
上場企業の大型倒産(負債総額100億円以上)が減った半面、負債総額が5000万円未満の小規模倒産が5069件と目立つのも懸念材料だ。小規模倒産の件数そのものは前年(5619件)を下回ったものの、倒産件数の全体に占める割合は過半数を超え、過去10年で最悪となっている。帝国データバンクは「大型倒産は金融機関による支援や事業再生ADRの活用などで抑制が続くが、倒産の小型化に拍車がかかっている」とみている。
果たして2015年も上場企業の倒産ゼロが続き、倒産件数、負債総額とも改善するのか?アベノミクスの真価が問われる1年となるのは間違いない。