海外メーカーによる2014年の国内新車(輸入車)販売は前年比3.4%増の29万196台となり、17年ぶりの「29万台超え」となった。国内では軽自動車販売が伸びる中、「登録車」と呼ばれる軽以外の自動車の不振が続いている。
こうした中で気を吐く輸入車が登録車に占める割合は、過去最高の8.8%に達した。今年も独フォルクスワーゲン(VW)が初の7万台超を目標とするなど販売増を目論み、鼻息が荒い。
ドイツの高級車にも勢い
海外メーカーの中でも特にドイツ勢が攻勢をかけ、販売台数を伸ばしている。とりわけ日本の道路事情に合う小型車の得意なVWの人気が高く、輸入車首位を昨年まで15年独走している。VWは昨年、消費増税の影響もあって販売台数の伸び率は前年比0.2%増と控えめだったが、小型車「ポロ」などが好調で過去最多の6万7438台となり、海外勢「未踏」の7万台が視野に入ってきている。
一方、アベノミクスが引き寄せた株高などによる資産効果で富裕層が潤っていることから、ドイツの高級車にも勢いがある。メルセデス・ベンツが前年比13.2%増の6万839台と初の6万台超えを果たしたほか、アウディが9.5%増の3万1413台、ポルシェが10.6%増の5385台。ドイツ勢以外では、超高級車の英ロールス・ロイスも32.8%増の154台だった。
各社が投入する安全性能などの高付加価値も、日本の消費者の購買意欲をかきたてているようだ。
ベンツが昨年7月、7年ぶりに全面改良した「Cクラス」は、「ステアリング(操舵)アシスト」と呼ばれる安全機能を搭載。前方車を認識して適切な車間距離を保つように速度調整するだけでなく、前方車両を道路の曲がり方とともにとらえることでハンドル操作も補助する。
VWが昨年8月に発売した新型の「ポロ」は、前方車を検知するミリ波レーダーを全車に搭載。衝突の危険を警告したり、自動的に加減速して車間距離を調節する。また、ギアをバックに入れるとモニターに車両後方の様子を映像で示す「リヤビューカメラ」も初搭載した。
2~3%程度の値上げに踏み切る
こうした勢いに乗って、特にドイツ勢は今年、日本市場にさらに浸透しようとしている。
VWは1月14日の記者会見で「2015年は新しいVWをつくる1年」と位置付け、「年間販売7万台超」との目標を明らかにした。具体的には2月にスポーツ用多目的車(SUV)「トゥアレグ」の新型車と、「ポロ」の高性能グレード車「ポロGTI」をそれぞれ発売。昨年発表した電気自動車「e-up!」も2月から受注を始める。さらに今年半ばには、全面改良した中型セダン「パサート」を投入する計画だ。
一方、昨年まで8年連続で新車販売が増加したアウディも1月14日に記者会見し、2015年の新車販売について「前年比5~10%増の3万3000~3万5000台」との目標を掲げた。今年はスポーツカーの「TT」を全面改良するほか、主力車「A3」にプラグインハイブリッド車を追加する。
ただ、輸入車には逆風も出てきた。
足元で続く円安で値上げを余儀なくされていることがその一つ。今年2015年1月から2月にかけてVWやアウディ、仏プジョー・シトロエンがそれぞれ2~3%程度の値上げに踏み切る。高級車を買う余裕のある人にはあまり関係ないかもしれないが、日本の小型車と競合する車種は影響がありそうだ。また、4月からエコカー減税の燃費基準が厳しくなる。海外勢で新基準を満たす車は半分以下と見られ、この点でも日本車との「価格競争力」に差が出そうだ。