韓国人のサラリーマンの90.18%が「火病(ファビョン)にかかったことがある」との調査結果がまとまった。
「火病」は、怒りやストレスを溜めこむことで発症する、韓国人特有の精神疾患と言われている。悔しさや恨めしさがこみ上げたり自殺願望が高まったりするほか、パニック障害や食欲低下(拒食症)、不眠症、不安感やうつなどでひどく落ち込んだりする。日本でいう、うつ病や対人恐怖症に似た症状を引き起こすようだ。
かかった理由、「職場での人間関係にともなう葛藤」が最多
韓国の就職ポータルサイト「Career キャリア」が、448人の韓国人サラリーマンを対象に実施したアンケート調査で、「職場生活のなかで火病にかかったことはあるか」という質問に、90.18%のサラリーマンが「ある」と回答した。
中央日報日本語版が「韓国人の火病急増、サラリーマン90%が病む... その原因は?」の見出しで、2015年1月28日に報じた。火病(hwa‐byung)は鬱火病ともいわれ、米国精神医学会でも1995年から認めているという。
アンケートによると、火病にかかった理由のうち、1位は「上司や同僚との人間関係にともなう葛藤」で63.80%を占めた。「業務の多さや成果に対するストレス」が24.89%と多く、「人事考課に対する不利益」(3.62%)や「早朝出勤や夜勤による睡眠不足」(3.17%)、「解雇やリストラに対する不安感」(2.71%)と続いた。
また、「火病はどのような形態で現れるか」との問いには、34.68%が「慢性疲労を病んでいる」と回答。「躁鬱症」が19.02%、「脱毛」が12.30%を占めた。「呼吸困難」(6.26%)や「パニック障害」(4.25%)との回答もあった。
この結果に、日本のインターネットユーザーからは、
「韓国は頑張った者が報われない、正直者がバカをみる社会ってこと」
「韓国人って無駄にプライド高くて、自分たちを客観的に見ることができなってことだよね」
といった声がある。
火病の原因の一つには、辛み成分の「カプサイシン」の過剰摂取がある、とされている。この成分が舌や胃、さらには脳に損傷を与えるといわれ、うつやパニック障害などを引き起こすとされる。
火病を抑えるには「カプサイシン」の摂取を控えることに加え、職場での悩みやストレスを解消することが大事になるとみられる。
「良好な職場の人間関係」が大事、韓国人30% 日本人は55%
とはいえ、職場での人間関係に気を遣っているサラリーマンの姿は、日本でも同じようなものだろう。韓国Careerのアンケート結果を受けて、韓国のインターネットユーザーが寄せたコメントに、
「職場はまるで軍隊のようだ。上下関係に厳しく、残業や飲み会は強制。誰だって病気になる」
とあったが、こんな声は日本でも聞こえてきそうだ。
リクルートワークス研究所の「アジアで『働く』を解析する 2013」によると、「仕事をするうえで大切だと思うこと」との問いに、「良好な職場の人間関係」をあげた韓国人は約30%。日本人はそれを上回る55%を占めていた。米国や中国、他のアジア諸国(いずれも、20%程度)と違い、日本人や韓国人がいかに職場で神経をすり減らしているかがわかる。
残業、残業で仕事に追いまくられ、睡眠不足になったり、うつを発症したりするケースは日本でも少なくない。最近は「パワーハラスメント」(パワハラ)と呼ばれる、「職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える」行為も目立ってきた。
厚生労働省によると、労災請求件数でみた過労死(脳・心臓疾患)は1999年の493件から2012年には842件に、過労自殺(精神障害)は155件から1257件に急増している。過労死は50代、60代に多く、過労自殺は働き盛りの30代で特に多いという。
韓国でも、自殺は20歳~30歳の死因の上位であり、その原因に就職難や、低賃金や失業による生活困窮があるとされる。火病と自殺との因果関係は定かでないが、職場でのさまざまな不満が鬱積して火病を発症したり、自殺に走ったりする人が少なからずいることは想像できる。