大相撲初場所で史上最多となる33回目の優勝を果たした横綱・白鵬が、自身の取り組みを巡って審判批判したとして波紋が広がっている。
横綱審議委員会では発言に対して「自分の未熟さをさらけ出している」と厳しい指摘がでた。半面、白鵬のブログには擁護のコメントが続々と書き込まれている。
横審委員長「自分の未熟さをさらけ出している」
「こんなの二度とないようにしてもらいたい」
白鵬が怒気を含んだ口調でやり玉に挙げたのは、勝負審判だった。初場所13日目、大関・稀勢の里との取り組みで物言いがつき、取り直しとなった判断に対してだ。問題の一番を見ると、白鵬が立会いから一方的に攻め込むが土俵際で稀勢の里が投げをうち、両力士ともほぼ同時に倒れたような印象だ。
審判委員で勝負のビデオを担当した錣山親方(元関脇・寺尾)は2015年1月27日のサンケイスポーツの取材に、「相手の体が落ちる前に横綱の右足の甲が土俵についており、別の担当親方から『白鵬の負け』との意見も出たという」と説明。総合的に判断して、「取り直しが極めて妥当だ」と話した。
だが白鵬は、そうは感じなかった。初場所優勝から一夜明けた1月26日の会見では「帰ってビデオ見たけれど勝っている相撲」とキッパリ。さらに「子どもが見ても分かる」とたたみかけ、「こっちは命を懸けてやっている」と語気を強めた。
横綱がメディアの前で勝負審判を批判するのは、極めて異例だ。横綱審議委員会の内山斉委員長は白鵬の発言について、「審判はスポーツの世界では厳正なもの。それを批判することは自分の未熟さをさらけ出していると言ってもいいんじゃないか」と指摘した。日本相撲協会の北の湖理事長(元横綱)も、白鵬に苦言を呈した模様だ。
1月28日のスポーツニッポン電子版によると、日本相撲協会には27日、ファンからの電話が殺到したという。その数は100件以上に上ったそうだ。9割は批判や反論といった苦情で、審判に物申すのは「日本人でもモンゴル人でもあってはいけないこと」との「お叱り」が出たという。
ところがネットでは、白鵬発言を評価する声が多い。
「一体何のためのビデオ判定か」
白鵬の公式ブログは、初場所初日直前の1月11日の投稿を最後に更新されていない。だがここに、多くの応援コメントが書き込まれているのだ。
「横綱として勇気ある当然の発言だったと思っています」
「白鵬関は問題発言などしていません。命がけでたたかっているのですから」
「審判に対する敬意、絶対性と、自分の意見を言うことは、まったくの別問題」
と、全面支持の様子だ。逆に審判に対しては「一体何のためのビデオ判定か」「5人の審判がビデオ判定しているのなら、取り直しはあり得ない」と反発する意見が並ぶ。ファンからのコメントは1月28日時点で550件を超えている。
だが白鵬の師匠の宮城野親方(元前頭・竹葉山)は1月28日、日本相撲協会の北の湖理事長と伊勢ケ浜審判部長(元横綱・旭富士)に前日に直接謝罪したと報道陣に明らかにした。親方から白鵬に注意し、本人も反省していると述べたという。
これで「一件落着」となるか、それとも審判の親方たちが「権威が傷ついた」として横綱本人への「直接指導」実施へと踏み込むのか。歴代優勝回数が塗り替えられた記念の場所後に、何とも後味の悪い騒動となった。