北海道の燃料販売会社、札幌第一興産が石炭の採掘事業に参入する。道内で新規に採炭がはじまるのは、記録が残っている炭鉱に限れば37年ぶりという。
炭鉱は最盛期(1950年代後半~60年代初め)には全国に900近くあったが、石油燃料への移行や安い海外炭に押されて90年代までにほとんどが閉山した。いわば斜陽産業で、現存する炭鉱は北海道にしかなく、しかも8事業者しか操業していない。
石炭事業、「発電向けはまだまだ成長の余地がある」
札幌第一興産の石炭採掘事業の第1弾は、北海道栗山町に開く、露天掘り炭鉱の「阿野呂第一炭鉱」。露天掘り炭鉱では、ほぼ40年ぶりの新規参入とされる。
鉱区は夕張市に近い16ヘクタールの民有地で、石炭の埋蔵量は3万8100トンを見込む。年間1万~2万トン程度を採掘。3~4年ですべてを掘り出す計画で、すでに北海道経済産業局に事業計画を申請し、2015年1月14日に認可を受けた。採炭には、同社の全額出資子会社があたる。
札幌第一興産は、「炭鉱は現在除雪中で、終わりしだい採掘に着工。早ければ4月には出炭できると思います」と話す。
同社の石炭事業は1949年の創業時から。官公庁から一般家庭に至るまで幅広く販売してきた。現在はロシアやインドネシアなどの海外炭の販売も手がけている。
採炭事業で着目したのは、電力会社の火力発電だ。同社は「(石炭事業は)一般向けは斜陽化していますが、発電向けはまだまだ成長の余地があります」と話し、火力発電燃料としての石炭需要の高まりが、「今後も期待できる」とにらんでいる。
石炭火力発電は温室効果ガス(CO2)の排出量が多いのが難点だが、石油よりもコストが数段安いことや、最近は高効率石炭火力の導入が進められている。また、北海道内では国産炭専用の火力発電所があるという事情もある。
同社は、採掘した石炭は他の露天掘り事業者を通じて、北海道電力の石炭火力発電用として出荷するという。
とはいえ、阿野呂第一炭鉱の規模は他の露天掘り事業者の採掘量と比べて、「ケタ違いに小さい」。同社としてはこの炭鉱を足がかりに、第2、第3の炭鉱を開発し、石炭の採掘事業を本格化したい考えだ。