イスラム国の特徴のひとつが、ソーシャルメディアを通じて欧米から兵士を募集したり、人質の拘束や殺害を動画サイト経由で公表したりする巧みなメディア戦略だ。
イスラム国が次のステップとして狙っているとみられるのが、「24時間チャンネル」。すでにPR動画の存在が明らかになっており、開局後は、英国人の人質を出演させ、兵士の採用活動を加速させる考えのようだ。
支配地域にFM局、リビアには衛星テレビ局
イスラム国はツイッターや動画サイトを通じた情報発信に加えて、本格的な「放送」を目指している模様だ。すでにイスラム国は、いくつか放送局をいくつか開設している。イスラム国の支配下にあるイラク北部の都市、モスルではFMラジオ局「アルバヤン」が放送している。アルバヤンは、イスラム国が湯川遥菜さんを殺害したことを報じており、菅義偉官房長官は2015年1月26日午前の会見で、同局について
「いわゆるISIL(イスラム国)の関連の広報のひとつであるとは承知している」
とコメント。同局のニュース内容が犯行声明に近い性質を持っていることがわかる。
他にも、リビアでは「タウヒード」と呼ばれる衛星テレビ局が運営されている。
新たな動きが明らかになったのは、2015年1月中旬のことだ。米ワシントン・ポスト紙や英ガーディアン紙によると、イスラム国関係のアカウントが、あるイスラム国系サイトのURLを相次いでツイートした。サイトは「イスラム国カリフの府支持者の公式サイト」を名乗っており、宣伝用動画がいくつか掲載されていた。動画の中には、イスラム国から近いうちに「直接放送」が行われると予告するものもあった。
毎週水曜日の「イスラム国時間」17時には兵士募集番組を予定
別のイスラム国関係の掲示板に投稿された動画では、24時間放送の宣伝チャンネルの開設も予告された。イスラム国に身柄を拘束されている英国人ジャーナリスト、ジョン・キャントリー氏が日々の番組の司会を担当し、毎週水曜日の「イスラム国時間」(日本時間-6時間)17時には、聖戦を行う戦士の採用のあり方を議論する番組も予定されているという。
キャントリー氏は1月上旬にイスラム国の宣伝動画に「リポーター」として登場し、英国では衝撃が広がったばかりだ。
「放送」が衛星放送なのか地上波なのか、あるいはネット上のストリーミングなのかは明らかではないが、ある程度大規模に番組作りが行われることを示唆する内容だ。
宣伝動画が掲載されたサイトはイスラム国が直接立ち上げたものかどうかは明らかではない。専門家は、イスラム国の支持者が運営しているとみているようだが、イスラム国が単なるゲリラではなく「国家」を装うという目的に近づく狙いが背景にある可能性も指摘されている。
1月27日時点ではサイトにアクセスできない状態で、「24時間チャンネル」に向けた動きは足踏みのようにも見える。だが、イスラム国のユーチューブ上の活動は相変わらず活発で、24時間チャンネルに動きも再び表面化する可能性がある。