「I am Kenji Goto Jogo...」――。インターネット上で公開された後藤健二さんとみられる男性の静止画像に付いていた音声は、後藤さんの肉声なのか。
音声を分析した専門家や関係者の見解はバラバラだ。
英語で3分弱話す
日本時間2015年1月24日23時ごろに公開された静止画には、イスラム過激派組織「イスラム国」とみられるグループに拘束された後藤健二さんと思われる男性の姿がある。手に持つ写真には、同じく拘束されていた湯川遥菜さんの遺体とされる姿が写っていた。
画像には英語の音声が重ねられていて、「声の主」は「私は後藤健二だ」と名乗る。日本政府に出していた解放の条件を「2億ドルの身代金」からヨルダンで死刑判決を受けている「爆弾テロ犯の釈放」に変更したなどと3分弱話し続けた。
画像については不自然な点がいくつか指摘されているが、あわせて疑問視されているのが「声の主」の正体だ。音声について、専門家の見解は二分されている。
前日本音響研究所長で、音響研究所長の鈴木松美氏はテレビ朝日の取材に対し、「99%以上同一人物」との見方を示している。「ケンジ・ゴトウ」と話す部分に着目し、「非常に短い言葉なんですけど、(以前の音声と比較すると)9~10点の同一点が見られるわけです。したがって同一人物であると思います」と断言した。
一方、鈴木松美氏の息子であり、現・日本音響研究所長の鈴木創氏は「please」「don't」「my」という単語の声紋を以前の音声と比較し、「全く別人だと思います。同一人物ではないと判断しました」とフジテレビの番組取材に答えている。実際に話していた人物は「日本人ではない方」とも指摘した。
2人の専門家が真逆の分析結果を提示しているのに対し、元警察庁科学警察研究所副所長の鈴木隆雄氏は複数紙の取材にコメントする中で、声紋がかなり似通っていることを認めるも「同一人物と断定はできない」と別人である可能性も残している。
後藤さん母「本人の声だとは思えません」
近親者や知人がマスコミに語った見解も食い違っている。交流のあるフリージャーナリストの安田純平さんは「音声は本人の声のようにも聞こえる」と答えている。だが後藤さんの母、石堂順子さんは「本人の声だとは思えません」との見解だ。後藤さんと一緒に仕事をしたことがあるシリア人ガイドも「これは健二の声ではない、違う声です」との感想だった。
声紋鑑定や近親者でさえも意見が異なる状況となり、インターネット上では困惑の声が広がっている。「音声の切り貼りの可能性は?」「本人肉声だったら静止画にする必要ない」といった意見も出ているが、26日17時時点で、はっきりとしたことは分かっていない。