世界一の「不妊大国」とも呼ばれる日本では、今や不妊の治療や検査を受けたことがある夫婦は6組に1組と言われている。それでも「結婚すれば子供もそのうちできるだろう」と、どこか他人事として捉えているカップルは少なくないだろう。
不妊治療を苦悩した経験を持つスポーツキャスターの陣内貴美子さん(50)は、そうした認識に警鐘を鳴らす。2015年1月20日放送の「解決!ナイナイアンサー」(日本テレビ系)の中で、「絶対結婚する前に自分の身体は診て(もらって)おいた方がいい」と訴えた。
体外受精1回50万円、検査結果に振り回される日々
陣内さんは37歳の時に元プロ野球選手の金石昭人さん(54)と結婚。当初は「結婚すると子供はできるものだ」と漠然と思っていたそうだが、2年経っても子宝に恵まれず、39歳から不妊治療を始めた。
最初に取り組んだ「タイミング法」(排卵日前日・当日に性生活を持って妊娠を目指す方法)では妊娠に至らず、検査を受けてみると卵管のねじれが発覚した。そのためすぐに「体外受精」に切り替え、排卵誘発剤を打ち始めたという。この時、すでに42歳になっていた。
陣内さんは「ほんっとにこれね、大変だから」と振り返る。誘発剤は自分で打つこともできるのだが、より確実性を高めるため毎日病院に通ったそうだ。治療費も馬鹿にならず、陣内さんの場合は体外受精で1回約50万円、顕微授精で1回約60万円かかったという。
苦労したのは体力面、費用面だけではない。検査結果に振り回される日々は精神的にも相当きついものだ。陣内さんは当時の状態について「その時の精神状態っておかしい。なんかねもう自分ですごく追い詰めちゃってる」「これだけお金出したんだから絶対できててほしいとか、一喜一憂がすごいんだよね」などと語った。
不妊治療を辞めたのは45歳の頃。追い詰められていく妻を隣で見てきた金石さんが「もうやめよう」と告げたことがきっかけだったという。陣内さんは自身の体験を次のように例えた。
「駅があってそこに赤ちゃんが待ってるとするじゃない。自分は列車に乗って駅に着くんだけど、そこに赤ちゃんは待ってなくて。次の駅にいったら赤ちゃんが待ってるんじゃないって思うわけ。だからどんどん辞め時が分からなくなってくる。その終着の駅を金石が決めてくれた」
「赤ちゃんを授かって無事に出産まで辿り着くのって奇跡よね」
一般的に女性は、30歳を超えると自然に妊娠する可能性が徐々に低下し、35歳ごろから急激に低下すると言われている。流産する確率や子宮筋腫などを患う率も加齢とともに増加する。不妊の原因はさまざま考えられ、男性側に問題があることも少なくないが、妊娠を望む多くの女性は誰しも年齢を意識している。
ただ「タイムリミット」は認識しながらも、陣内さんがそうだったように「結婚したら子供は自然と授かるもの」と考えがちであることもまた事実のようだ。妊娠・出産に至るまでの本当の難しさは「妊活」を始めてからでないとなかなか理解できないのかもしれない。
陣内さんは番組で「絶対結婚する前に自分の身体は診て(もらって)おいた方がいい。子供が欲しい・欲しくないに関わらず、女性は絶対検査したほうがいい。早く行ったほうがいい。自分と同じ思いはしてほしくない」と重みのある言葉で訴えかけた。
番組は反響を呼び、視聴者は「涙が止まりませんでした」「他人事ではない」「赤ちゃんを授かって無事に出産まで辿り着くのって奇跡よね」などとインターネット上に相次ぎ書き込んだ。
不妊治療を経験した芸能人は少なくなく、同じ番組に出ていた東尾理子さん(39)は夫の石田純一(61)に支えられながら不妊治療を続けているという。お笑い芸人のエド・はるみさん(50)も2013年に不妊治療をしていると告白。2014年1月には森三中の大島美幸さん(35)が「妊活休業」を宣言した。他にも山本モナさん(38)、ジャガー横田さん(53)、太田光代さん(50)らが不妊治療に取り組んだことを明かしている。