イスラム過激派組織「イスラム国」が日本人2人を人質に取り、巨額の身代金を日本政府に要求してきた事件は、その脅威が日本にとって「対岸の火事」ではないと印象づけた。
イスラム国は構成員が交流サイト(SNS)を使って、世界各国から参加者を勧誘している。どうやらその「手」は、日本人にも伸びているようだ。
「イスラムについて日本語で学びたいか」とメッセージ
欧米の人質を殺害する残虐な映像をインターネット上で流してきたイスラム国。一方でネットを、戦闘員を集めるツールとしても活用している。そのひとつが動画だ。
軍事訓練の様子を映したPRムービーでは、高度な映像編集技術を使って巧みに演出し、勇ましい効果音をつけて「格好いい兵士たち」のイメージをつくりだしている。戦闘員となった英国人を英語でインタビューするなど、「多国籍」のアピールも忘れない。2014年6月21日、米CNNでコメントした中東問題の専門家は、「英語の使用は、イスラム国が西側諸国を攻撃するたくらみがあることを意味している」と分析。訓練の映像を流すことで「欧米の若者に『エキサイティングだ』と感じさせるようにしている」と警告した。
ツイッターでの情報発信も積極的で、英語でツイートする構成員も少なくない。しばしばアカウントが凍結されているようだが、すぐに新しいアカウントをつくり、それを仲間が紹介して拡散を図っている。
2人の日本人が拘束されて「殺害予告映像」が公開されてから、日本でのイスラム国への関心は否応なく高まっている。ツイッターでは、「イスラム国に行きたい」との書き込みまである。本気かどうかは疑わしいが、冗談にしてもやめておいた方がよいだろう。実は日本人にも、イスラム国構成員とみられるアカウントからの呼びかけが増えているようなのだ。
あるユーザーは、日本語で「イスラム国の一員になりたい」とツイートしたら、イスラム国関係者とみられるアカウントから「イスラムについて日本語で学びたいか」とのメッセージが届き、関連のリンクを紹介されたと報告した。同じ人物が、ほかにも複数の日本人のアカウントに向けてイスラム教の解説ビデオのリンクを送り、「これを聞いてリツイートせよ」と書いていた。直接的に勧誘してはいないが、日本人の2人の人質画像を投稿するなどイスラム国支持者であることは間違いなさそうだ。