トヨタ自動車が2015年秋にも発売するハイブリッドカー(HV)の新型「プリウス」の燃費がガソリン1リットルあたり40キロメートル(km)に達したようだ。モーターなどのハイブリッドシステムの性能を高めたとされる。
激しい燃費競争が繰り広げられるなか、「リッター40km」が実現すれば、他のガソリン車やHVと比べて、世界一の燃費性能になる。
0.2kmを争う、熾烈な燃費競争
自動車メーカーによる燃費競争は、軽自動車を含め、年々熾烈になっている。
ハイブリッドカー(HV)をめぐっては、トヨタ自動車とホンダが首位争いを演じている。トヨタは小型車「AQUA(アクア)」で、ガソリン1リットルあたり35.4kmを実現し、2011年12月に発売。すると、ホンダが13年9月に発売した「フィットHV」が36.4kmを達成。それまで首位だったトヨタの「アクア」を抜き去ったが、13年12月にトヨタはそのアクアを改良して、世界トップの低燃費37.0kmを実現した。
一方、ガソリン車は、ダイハツ工業が「第3のエコカー」として2011年9月に売り出した軽自動車の「ミライース」が、ガソリン車としては初めてHV並みの1リットルあたり30.0kmを達成。しかし、その直後の同12月にはスズキがリッター30.2kmの「アルトエコ」を発売。ミライースを0.2km上回った。
ところが、13年8月にダイハツが33.4kmを実現して再びトップに立ち、同12月にはスズキが35.0kmで巻き返し、14年7月にはダイハツが35.2kmを達成。さらに、14年12月にはスズキが新型アルトでリッター37.0kmの低燃費を実現し、再度首位を奪還した。
トヨタのアクア、スズキのアルトとも、現在リッター37.0kmで「世界一」の低燃費だ。
そうした中で、トヨタはHVの新型「プリウス」を2015年秋にも発売する。2015年1月20日付の読売新聞によると、新型プリウスはモーターなどのハイブリッドシステムの性能を高めるとともに、排気量1.8リットルのエンジンの燃焼効率を向上させる。樹脂素材を多く使うほか、電池の小型軽量化を図ることで、車体重量は現行の約1600キロから100キロ程度軽くなるもよう。それにより、燃費性能はガソリン1リットルあたり40kmに達するという。現在の32.6kmからは大幅な向上だ。
新型プリウスについて、トヨタ自動車は「現時点で発表できることはありません。新車の性能や発売時期などについてはお話できません」としているが、実現すれば「アクア」とスズキの軽自動車「アルト」を上回り、「世界一」の燃費性能になる。
トヨタは「燃費」に囚われすぎるのか?
燃費性能について、トヨタ自動車は「HVの歴史はまだ浅いですし、技術的にもなお燃費性能は向上できると考えています」と話す。
HVは、いまや低燃費車の「代名詞」。TIWの自動車アナリスト高田悟氏は「日本車にとって燃費は生命線といえます。トヨタはHVで先行し、燃費性能で勝ってきました。いわばトヨタの技術の証ですし、HVによる燃費改善努力が他の技術にも生きています」と、高く評価する。
とはいえ、すでに燃費性能はガソリン1リットルあたり数百メートル、数キロメートルを競う段階で、どのクルマも差がなくなってきているともいえる。
たとえば、軽自動車は燃費だけでなく、販売価格や税金などの維持費までのトータルコストで考えるとHVよりもはるかに安い。
また世界販売でみると、「世界一の市場」となった中国を含めた、新興国向けのシェアが増すなか、現地ではまだまだガソリン車が主力だ。実際に、スズキは軽自動車で蓄積した低燃費技術をインドや東南アジアなど新興国戦略車にも導入。また、ホンダは小・中型車用のターボチャージャー(過給器)付きエンジンを開発。2015年に欧州でターボエンジン搭載車を投入するという。
インターネットでは、ユーザーからか、
「トヨタの燃費に対する偏狭ぶりはおかしい」
「最近のトヨタはハイブリッドしかネタがない感じ。ちょっとまずいんじゃない」
「くだらない燃費競争にかまけているうちに、ドイツ勢にやられちゃう状況に歯がゆさを感じる」
といった声が少なからずある。
HVが支持されている国内販売が、少子化や若者のクルマ離れなどの影響もあって頭打ちのなか、トヨタの世界販売は2013年、14年と2年続いて1000万台を超えたが、一方で独フォルクスワーゲン(VW)に尻尾をつかまれるまでに追い込まれている。