ネットに出回る「反日ポスター」描いたのは
「アンブロークン」が反日映画だとうわさされる一因に、映画ポスターがある。ネット上には、血塗られた「日の丸」の旗をバックに銃と戦闘機、ひとりのランナーがシルエットになっている絵や、有刺鉄線でつくられた五輪マークのひとつが日の丸状に赤く染まり、真っ赤に塗られた日本列島が重なるようなデザインなど複数が出回っている。これらは映画タイトル、監督や主演俳優の名が書かれており、まるで宣伝ポスターそのものだ。
ところが公式サイトには、これらのデザインは見当たらない。実際に使われているのは、後姿のザンペリーニ氏が石版のような重たいものを両手で担ぎ上げているワンシーン。公式フェイスブックでは、同氏役の俳優を正面から撮り、背景には漂流の場面や競走でテープを切るシーンなどが挿入されている。実は「血塗られた日の丸」をモチーフにしたデザインなど一部は、ブルガリアのデザイナーが勝手につくってネット上で公開しているもの。ほかも出所が不明の「非公式ポスター」のようなのだ。
過去にも、1983年公開の「戦場のメリークリスマス」(大島渚監督)のように日本兵の捕虜虐待シーンが登場する作品はある。前出の町山氏は、同作が反日だと騒がれることはなかったと指摘した。
映画で「悪の権化」として描かれる看守・ワタナベは実在した人物で、本名は渡邊睦裕氏(故人)。1998年には米CBSテレビのインタビューに応じている。ザンペリーニ氏を徹底的に虐待したことを遠回しながら認め、「軍の命令ではなく、私自身の気持ちから見てフレンドになれなかった」と話した。番組では、捕虜収容所で渡邊氏の部下だった男性が登場し、「彼は収容所の部下全員から嫌われていた。問答無用で人を殴るから」と証言。ナレーションでは渡邊氏を「捕虜だけでなく日本軍の同僚も異常者だと思っていた」とした。
日本での作品公開について2014年12月5日付の産経新聞は、配給元の米ユニバーサル・ピクチャーズが、日本では抵抗感が強いため「思案しているもようだ」と報じている。