「円安・株高」をもたらしたアベノミクスも3年目。日経平均株価で「2万円」の声も一部で聞かれるなか、注目されているのが新規公開(IPO)株だ。
東京証券取引所グループによると、2014年に株式を新規上場した企業は90社(東証マザーズ、ジャスダック市場を含む)。2015年は100社の大台が見込まれており、リーマン・ショック前の「IPO株ブームの再来」との期待が高まっている。
14年後半からは「初値売り」の利益が大きくなる傾向
株価の上昇傾向で、株式の新規公開(IPO)が増えている。過去3年の推移では、2012年が66社(うち、東証マザーズ24社)、13年は75社(マザーズ32社、ジャスダック6社、大阪証券取引所との経営統合による)、14年は90社(マザーズ45社、ジャスダック11社)だった。
10年前の「IPO株ブーム」にあたる、2004年の153社(マザーズ57社)には及ばないものの、15年には100社の大台が見えてきた。株式の公開件数が増えるほど、IPO株への投資機会もますます増えるというわけだ。
IPO株といっても、たとえば、鉄道・ホテルの西武ホールディングス(2014年4月23日上場)や外食大手のすかいらーく(10月9日上場)、就職情報大手のリクルートホールディングス(10月16日上場)といった東証1部に上場する大型案件もあれば、新興市場への上場もある。
そうした中で、投資の魅力があるIPO株はやはり新興市場だ。東証マザーズなどに上場する企業の多くは、ベンチャー企業で成長性も高く、その分の多くの利益が期待できるとされる。
なかでも、14年後半からは「初値売り」(株式公開後、初値で売却すること)の利益が大きくなる傾向にあった。
たとえば、12月26日に東証マザーズに上場した医療人材紹介のMRTは800円の公募価格が初値で3275円まで、じつに4.09倍に膨らんだ。デジタルコンテンツのカヤック(同25日上場)は560円が3.22倍の1803円に、ゲーム開発のエクストリーム(同日)は1400円が3.96倍の5550円、オンライン旅行販売のアドベンチャー(18日)は2500円が2.27倍の5680円、弁護士ドットコム(11日)が1230円の公募価格に対して3.15倍の3880円を付けた(いずれも、東証マザーズに上場)。
そもそもIPO株の公募価格は、株式を公開する会社の業績や資産内容などを勘案して決められるが、一般的に低めに算出される傾向がある。そのため、IPO株が上場されると、初値が公募価格を上回るケースが多く、利益を得やすいとされる。
最近は、アベノミクスで株式に投資したかったが、上がりすぎて手が出せないといった個人投資家が少なくない。そんな個人投資家がIPO株への投資を狙い目とみているともいわれる。
ちなみに、一般の人がIPO株を買うには、証券会社の抽選に当たらなければならない。
2004年のブームでは、IPO株の9割超が「儲かった」
もちろん、IPO株だからといって、「儲かる」銘柄ばかりではない。株式を新規公開した企業は2014年12月だけで28社あったが、そのうち公募価格が初値を下回ったケースは5社あった。
また、たとえば中小型液晶パネルのジャパンディスプレイ(3月19日、東証1部上場)は900円の公募価格に対して初値が769円と14.6%も下回ったし、前出の大型案件として話題となった、すかいらーく(公募価格1200円、初値は横ばい)やリクルートHD(公募価格3100円、初値3170円)も冴えなかった。
IPO株は一般に、成長性が高く、また景気のいい時ほど「大化け」するとされる。その半面、資金調達額が大きく株数も多い大型案件は、抽選に当たる確率が高くなる一方で初値をつけたらすぐに売る投資家が多いため、「大きく儲かりにくい」ともいう。
とはいえ、かつてIPO株がブームになった2004年から05年にかけては、抽選に当たれば儲かるといった状況で、2004年にはIPO企業のうちの9割超で初値が公募価格を上回った。
2015年は、日本郵政やJR九州、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンといった大型案件の上場が取り沙汰されているほか、14年秋に上場予定だったのが延期されたLINEも注目されている。