「20、30の会議の中身が全部漏れている。相当な屈辱感」
著書では、社内の情報が他社に漏れることについてもかなりのスペースを割いて論じている。例えばこんな具合だ。
「市川速水GMは14年10月、大阪本社で行われた『社員集会』で、集まった社員たちを前にして、こんな衝撃的な事実を吐露した。
『今回は私の身の回りでも、20、30の会議の中身が全部漏れている。相当な屈辱感を感じている』
なぜこのような情報漏洩が絶えないのか?それは敵対的なメディアを使ってでも社内のライバルを叩き、自分の立場を有利にしたい幹部がいつも現れるからである」
一連の事件で特に問題視されているのが、池上コラム問題が朝日新聞側から週刊誌にリークされたことだ。
作家の佐藤優氏は14年9月16日に産経新聞のウェブサイトで、01年に一部の外務官僚が田中真紀子外相(当時)攻撃のために秘密情報をリークしたことを引き合いに、
「秘密を守ることができない組織に、リスクを冒して機微に触れる情報を伝える人はいない」
「池上事件で露呈したように編集サイドから、書き手との間で信頼関係に基づいて秘密裏に打ち合わせている事柄が外部に流出する状態では、朝日新聞と本気で仕事をする書き手がいなくなる」
と指摘している。
書籍ではこれを受ける形で、朝日新聞についても「組織としてもはや崩壊していると認めざるを得ない」と結論付けた。
「こうした形の情報漏洩は、通常、崩壊しつつある組織で起こる。組織内の秩序と統治が失われ、モラルハザードが蔓延しているからだ。それはわれわれ朝日新聞記者たちが、スキャンダルに揺れる政党や企業などを取材する現場で嫌というほど見てきた真実だ。佐藤氏が指摘する01年頃の外務省も、いわゆる田中真紀子問題と機密費問題で崩壊しつつあった。ということは、朝日新聞も組織としてもはや崩壊していると認めざるを得ない」