全国都道府県対抗男子駅伝大会で、「悲劇」が起きた。中継所目前で倒れた走者が、たすきを次の走者に渡そうと思わず前方へ投げてしまい失格となったのだ。
規約上、たすきは手渡しでなければ認められない。残酷とも言える判定に、テレビ中継の解説を務めた宗茂さんは「ちょっと厳しいですね」と発言した。
日本陸連の基準は「たすきは手渡さなければならない」
愛知県チームの1区走者の高校生が、2区の中継所目前で突如両手をついて倒れ込んだ。一度は立ち上がるが、フラフラとコースを外れる異常事態。はいつくばって、手を伸ばして待つ次の走者に何とかたすきを渡そうと進む。最後は右手に握りしめたたすきをポーンと前に放り投げた。次の走者がつかみ、駆け出す。この時、近くの審判が「あっ」と驚いた表情に見え、2区走者も少々ちゅうちょするように振り返ったが、結局はそのまま去ってしまった。2015年1月18日、広島県で行われた「第20回全国都道府県対抗男子駅伝大会」での出来事だ。
悲報は3区の途中でもたらされた。NHKのテレビ中継でアナウンサーが、「愛知は1区走者がたすきを投げたために失格、順位なし、(2区以降は)区間記録のみ認められる」と告げたのだ。この日の解説は、マラソンで2度の五輪出場を果たし、指導者としても多くの選手を育てた宗茂さん。「たすき投げ」が失格と聞き、思わず「あれぐらいは、という気がするんですけれど、ちょっと厳しいですね」と漏らしたのだ。
駅伝を含む国内の陸上競技を統括する日本陸上競技連盟は、「駅伝競走基準」を定めている。その第9条にはたすきに関する取り決めがあり、こう書かれている。
「たすきは必ず前走者と次走者の間で手渡さなければならない」
今回は珍しいケースだが、「投げ渡し」は明白なルール違反。宗さんが日本陸連の規約を知らないはずはないが、意識を失いかけながらも必死でたすきをつなごうとした高校生走者の姿に、思わず「ちょっと厳しい」と口を突いたのかもしれない。
では、たすきを投げて手放した時点で失格なのか。日本陸連事務局に電話取材すると、もし投げた後にルール違反だと気づいて拾い直し、中継所まで持ち運んで次の走者に手渡せば成立、たすきはつながったと判定されるという。